アメリカ大統領選挙の結果、バイデン元副大統領が新大統領となることがほぼ決まりました。
国内において分断をどう乗り越えるのか、あるいは、民主党内も穏健派から左派までかなり幅が大きいので、そこをどうまとめていくか、バイデン次期大統領にとってはこれからが正念場と言えそうですし、グローバルに経済が動く最近の情勢を考えれば、我が国の経済に与える影響も極めて大きいので、経済政策を含め、人事も含め今後の動向に注目したいと思います。
さて、わが国にとって最も重要なのは、アメリカの対外政策が今後どのようになっていくかです。
トランプ大統領はトップダウンのやり方を好み、周囲が予想しなかった行動をとるなど、いわば「荒れ球ピッチャー」型の大統領でした。バイデン次期大統領は基本的には政府機構との協調を図る穏健なやり方が予想されますので、いわば「制球がいいピッチャー」型となると思われます。
もちろん、まだ人事も固まっていない状況なので、さらに詳細な分析が必要ですが、4年ぶりに大統領が変わり、わが国としても安倍総理から菅総理に7年9か月ぶりにトップリーダーが変わったわけで、首脳外交が極めて重要性を増している最近の国際政治を考えれば、どのようにして我が国のプレゼンスを国際政治的に最大化するか、戦略的に動いていかねばなりません。
注目すべきポイントとしては、最近の外交の一つの柱である、グローバル課題への多国間対応、いわゆるマルチの分野と、中国・北朝鮮を抱える東アジアならではの伝統的な安全保障的な二国間の分野、それぞれに分かれると思われます。
特に中国が影響力を強める中で、アメリカがグローバルな課題の解決や世界のルールメーカーとして積極関与する方向に向かうのか否かがマルチの分野での注目です。パリクラブへの復帰にバイデン次期大統領も言及しているようですが、これはアメリカとしても実質的にこれまでも州や民間ベースでは動いていた話で明確な方針転換とまでは言えません。
むしろ、自由貿易をどこまで民主党左派を説得しながら進められるのか、そこが注目ポイントと言えます。具体的にはTPPやあるいは安全保障の分野にもつながりますが、「航行の自由」という観点での南シナ海や東シナ海、台湾にどうコミットできるかがポイントです。
そして、安全保障、二国間の分野においては、中国とどう対峙するかがまさに最大のポイントとなることはいうまでもありません。アメリカの伝統的な外交エキスパートはどうしてもワシントンからの視野として、ロシアを最大の脅威ととらえ、NATOを一義的な同盟と考える傾向があります。
しかし、最近の中国の様々な意味での台頭とその野心を考えれば、アメリカがいかに中国をリアリズムの観点での脅威と考え、日本や台湾、あるいはベトナムやインド、オーストラリアを一義的な同盟と考える環境を創れるのかが、今後の我が国の命運を考える上では極めて重要です。
民主党政権は伝統的に、人権などの価値に関して対中国でも厳しい姿勢を取る傾向がありました。ウイグルや香港についてはその傾向からすればかなり厳しい姿勢で臨むと思われます。
そこに加えて、最近の中国の動きのエスカレーションからすれば、安全保障的視野での戦略的な取り組みと、南シナ海、台湾海峡、東シナ海において軍事的な「行動」をとりうる覚悟が極めて重要になってきます。ここが、アメリカが世界やアジアへの関与を継続できるかの試金石でもあります。
私自身も個人的なチャネルも駆使しながら、わが国にとって最善の国際政治環境を創っていくことができるよう、日米関係をさらにレベルアップしていくために全力を尽くしてまいりたいと思います。
編集部より:この記事は、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区、自由民主党)のブログ2020年11月9日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。