2021年は自動車業界に再びスポットライトか?

岡本 裕明

このところ、自動車関連のニュースが多かった気がします。

コロナ禍の中、決算上方修正を発表したトヨタ
日産は21年3月期赤字縮小見込みで「日産ネクスト」から「ポスト日産ネクスト」へ攻めの姿勢
ホンダが発売するレジェンドは世界初のレベル3
BMWは旗艦車の大型EVのSUV「iX」を21年後半に発売、航続距離600キロ
中国2025年に条件付き新車販売の50%を自動運転車に
英国はガソリン/ディーゼル車の販売を2030年に禁止へ
カナダケベック州はガソリン車販売が2035年まで
ベンツは2025年までにコスト20%カット、経営資源はEVに集中
ルノーは21年に1万ユーロ(120万円)のEVを発売へ

この1-2年、テスラに押されて、パッとしたニュースがなかったのですが、テスラに刺激を受けたのか、内外の自動車関連のニュースが目を引きます。

(gorodenkoff / iStock)

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個人的にはまず、ホンダがレベル3の車を日本で発売する点を大きく評価したいと思います。車そのものの性能もそうですが、「高速道路での走行時に視線を前方から離しても運転が可能な機能について国土交通省からの認可を得た。レベル3の車の実用を国が承認したのは世界で初めて。」(日経)。更に「ドライバーは緊急時に運転を引き継げる態勢を求められるが、前方から目を離してスマートフォンやテレビを視聴できるようになる」とあります。これは画期的です。

この1-2年、その到来が待たれていた自動運転が高速道路に限るものの当局が許可を出したというのは極めて大きなステップだと考えています。特に自動運転の場合、日本の警察や国交省の前例主義的発想から役所仕事の汚名返上だと思います。見方を変えれば煽り運転などアホなドライバーが後を絶たないこと、高齢者の高速逆走や反射神経の鈍化などによる事故も起きていることを考えると自動運転モードにしたほうが全体のマナーの向上と事故の減少につながるのかもしれません。

私は自動運転についてはトラックや定期路線のバスが先に来ると思っていました。これは長時間運転による疲労の蓄積で事故率が高くなることもありますが、厳しい労働環境のため、なり手が少なくなっていることも踏まえ、早期のトラック/バスの自動運転が望まれていたはずです。多分ですが、遅かれ早かれトラックの自動運転の普及が始まるのは間違いないと思います。

EVについては中国、欧州が先陣を切っていますが、バイデン氏が大統領になった場合、燃料規制の強化を既にアナウンスしており、EVを全面的に推し進めるカリフォルニア州の政策も相まってどのようなEV推進策を打ち出すかが注目されます。その場合、日本勢では日産自動車が有利と見られますが、テスラのように高級で近未来型装備を武器に高所得者層からその啓蒙を進めた政策がまだ引き続き機能するとすれば欧州勢の高級EV車のラインアップが有利となります。

ただ、アメリカでは欧州車はさほどポピュラーではなく日本車への期待感が高いのではないかと思います。その点でトヨタ陣営がEVシフトが遅れているのが気がかりなところであります。トヨタはハイブリッドに強みがありますが、あれはそもそも過渡期という位置づけだったと認識しています。

内燃機関、つまり通常のエンジンのクルマは世界規模で今後、急速にシェアを落としていくものと思われ、現在ある専門家予想より加速度がつき、先進国では2030年には販売比率が3割以下になるのではないかとみています。ただ、新興国の内燃機関の需要は7割ぐらい残るとみられていますが、これはインフラ整備の遅れが理由であり、主要自動車会社は内燃機関は手掛けないとみています。薬でいう後発医薬品、飛行機でいうLCCであって新技術の開発投資は制限されるのは目に見えています。よって自動車会社がセカンドブランド化させるところがでてくると思います。日本では特にそれが鮮明になるかもしれません。

日本では来年以降、自動車業界の再編がより明白に進むように思えます。トヨタ、ホンダ、日産を軸とすることは間違いないのですが、3グループ全く違う展開をするとみています。トヨタはグループ力を強化しながら王道の経営展開、ホンダは異端児的性格を維持しながら他国の自動車会社などと更なる関係強化、日産はルノーに技術的依存ができないため、独力でEV化を推し進める一方、三菱自動車との離縁がないとは言えない気がしています。

EV化の最大のネックはマンション、コンドミニアムに於ける充電であり、この改善は容易ではないと思います。どう充電するのか、まったく発想を変えた普及方法を編み出す必要がありそうです。

2021年は自動車業界の変革元年となりそうな気がしています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月23日の記事より転載させていただきました。