独「少女像」で韓国ロビーに警戒を

ドイツの首都ベルリンのミッテ区議会は1日、区内に設置された従軍慰安婦の「少女像」を1年間、設置し、その間に恒常的な解決策を模索する決議を賛成24票、反対5票で可決した。社会民主党、「緑の党」、そして左翼党の3党議員が主に賛成票を投じた。同区は日本側の強い撤去要請を受け一時は撤去を決めたが、韓国側の撤去要請不服申し出を受け審議してきた。

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同区は議会の決定を受け、1年間とはいえ、日本側の撤去要請を退けて展示継続を認めるものとみられ、日本側は失望を表明する一方、ドイツ側の再考を引き続き促す意向。一方、韓国側はミッテ区の決定を歓迎し、少女像の恒常的設置を勝ち取るためにドイツ側に更に強く働きかけていくとみられる。

これまでの経過を少しまとめる。

ベルリン市ミッテ区の公道で9月28日、在ベルリンの韓国人団体「韓国協会」(Korea Verband)が旧日本軍の慰安婦を象徴した「少女像」を設置した。その直後、在独日本大使館が抗議。

日本政府はベルリンの公道で少女像が設置されたという情報を受け、加藤勝信官房長官が「極めて遺憾」と表明。茂木敏充外相は10月1日、ハイコ・マース独外相との電話会談で、少女像の撤去を要請。ドイツ日刊ターゲスツァイトゥング(Taz)によると、在独日本大使館はベルリン州上院に少女像に関する背景と立場を伝え、少女像の撤去を要求した。

韓国側は旧日本軍の蛮行を批判し、女性の権利を蹂躙したと指摘、少女像は戦時の女性の権利擁護の一貫でもあると主張。それに対し、日本側は韓国側の主張するような強制的な従軍慰安婦はいなかったこと、日韓両外相(岸田文雄外相と尹炳世韓国外相=いずれも当時)は2015年12月28日、慰安婦問題の解決で合意に達し、両政府による合意事項の履行を前提に、「この問題が最終的、不可逆的に解決することを確認する」と表明。それを受け、慰安婦問題は外交上解決済みだと説明してきた。

ベルリンのミッテ区当局は10月7日、在独日本大使館からの撤去要請を受け、韓国側に10月14日までに像の撤去を指示する公文書を送る。理由は、韓国側が少女像にある碑文を区当局側に事前に報告していなかったこと、そのうえ碑文には第2次世界大戦当時、旧日本軍がアジア・太平洋全域で女性たちを性奴隷として強制的に連行していたなどの一方的な歴史観が明記されていたことなどを挙げている。ドイツ側は、「わが国に日韓の懸案を持ち込んで公共の安全を脅かすことは許せない」と説明している。

しかし、韓国側は行政裁判所に少女像撤去差し止めを申請した。ミッテ区側は10月13日、同裁判所の決定まで撤去を延長すると伝達。同区議会は先月7日、撤去命令を撤回する決議案を採択した。そして今回、少女像の永続設置を検討する旨を明記した決議を可決したわけだ。

韓国側は 日韓慰安婦合意で両国は、国連や国際社会で同問題をめぐり互いを非難、批判することは控えることになっている。にもかかわらず、文在寅政権はその後、同合意を一方的に無効として、基金は解体したことで問題は再び振り出しに戻ってしまった。

日本政府側がドイツ側に積極的に慰安婦問題を説明するなど外交努力を重ねてきたが、文政権はベルリンの少女像設置問題は民間団体が行ったもので、政府が関与する問題ではないという立場を取る一方、様々なルートを通じ、ドイツ政府にロビー活動を展開させている。その一人はゲアハルト・シュレーダー前独首相(首相任期1998年10月~2005年11月)だ。夫人が韓国人でもあることもあって、日本の戦争時の蛮行を積極的に批判し、少女像設置問題でも韓国側を応援している(「訪韓した元独首相の『反日』」発言」2017年9月14日参考)。

少女像設置の責任者「韓国協会」は「少女や女性への性犯罪を罰し、性犯罪を世界から追放するため」と少女像の設置目的を説明しているが、このグループは反日に凝り固まった反日を職業とする活動家グループとみて間違いないだろう。「女性の権利」を守るというのならば、自国内で取り組まなければならない問題のほうがはるかに多く、緊要のはずだ。

韓国は人口当たりの性犯罪が非常に多い国であり、韓国国内では性犯罪が多発している。ベトナム戦争での韓国軍兵士のベトナム人女性への性犯罪は件数だけでも多い。にもかかわらず、わざわざドイツに出かけ、旧日本軍の慰安婦問題を糾弾しているわけだ。

韓国聨合ニュース(12月2日)によると、「韓国協会」のハン・ジョンファ代表は「永続設置に向けた議論が始まるということは、ベルリンに少女像を永遠に存続させるための大きな一歩を踏み出すことになる」と評価したという。女性への性暴力の弾劾をアピールする形をとりながら、日本の慰安婦問題を取り上げて日本側を批判しているのだ。この分野では韓国は年季が入っている。

ドイツの政治家は韓国側の主張に容易に同調するだろうが、韓国側から常に偏向した反日報道に苦しめられてきた日本側は韓国側の本音を知っている。ドイツ側に「韓国の反日情報の真偽を確かめるように」と要請しなければならない。しんどい仕事だが、韓国側のロビー活動を打ち破り、日本の主張を貫徹するためには根気よく、忍耐強く継続しなくてはならない(「独で見られる反日傾向と『少女像』」2020年9月30日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年12月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。