圧倒的なビジネスモデルの違いに起因する医療・介護業界の恐怖!!

「与信」という言葉をご存知ですか?

一般企業においては最重要である与信を、おそらく医療・介護業界の方はほとんど知らないと思います。

企業が存続するには当然ながら売上が必要です。しかしそれ以上に大切なのが売上金の回収です。例えば商品を納品して、売上を払わずに取引先が倒産することは、企業間取引では日常茶飯事的に起こります。もちろん私も経験しています。そこで出てくる概念が与信です。

与信ーどれだけ信用を与えるか?

常に取引先の財務状況、つまり支払能力に気を配り、売る上限を取引先ごとに設定します。万が一「あそこ潰れそう」なんて情報があれば、取引中止もしくは前払いで入金してもらう形に即切り替えます。新規参入企業は取引実績を積み上げて与信を増やしていきます。

一方で、もちろん自社も他社から与信という概念で見られています。一度経営不振に陥れば、取引先は一気に冷たい対応を取られます。みんな自分の会社を守るのに必死なのだから当然のことです。与信の概念がなければ軒並み連鎖倒産です。ビジネスの世界はシビアです。逆に絶対離せない取引先もあります。古くから艱難辛苦を共に乗り越えてきた取引先とは、簡単には縁は切れません。それもまたビジネスの世界です。

しかし医療・介護の世界には与信の概念がありません。なぜなら日本は国民皆保険の世界なので、お金の支払い元の大半はお客様である患者ではなく国や市町村だからです。国や市町村から取りっぱぐれることはありません。きちんとした請求書を出しさえすれば確実に回収出来ます。そして言い方を変えれば、与信がない故に取引先という概念もなくなります。長年連れ添った取引先も全く新規の取引先も、同じサービスを提供すれば同じ料金が確実に回収出来ます。全ての取引先は同じなのです。

医療・介護業界は一般企業が最も苦心する「与信管理業務」がほぼないように思われます。それは裏を返せば取引先の概念もない危険な世界です。医療従事者から見て手のかかるお客様も楽なお客様も営業的観点では同じなので、楽なお客様に流れる可能性があるからです。手のかかるようになったら楽な方に乗り換えれば、経営的にはなんの問題もないからです。

穿った見方かも知れませんが、ビジネスモデルから見る医療・介護業界の持つ怖さを紹介しました。


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ元社長)のブログ「ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」2020年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。