独で過去24時間590人が死去

ドイツの著名なウイルス学者、クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)は8日、北ドイツ放送(NDR)で、「クリスマス期間になれば新規感染者数が再び急増することは間違いない。早急に新型コロナウイルス感染防止のための規制強化に乗り出すべきだ」と警告を発した。同教授によると、「規制強化を躊躇すれば、1月末から2月いっぱいまで、部分的ロックダウンではなく、完全なロックダウンを実施せざるを得なくなり、国民経済にも大きな影響が出るだろう」というのだ。

▲「ワクチンは救いか、錯覚か」という表紙の独週刊誌シュピーゲル(2020年44号の表紙)

ドイツの「国立科学アカデミー、レオポルディーナー」は8日、共同声明を公表したが、ドロステン教授もそれに関わった1人だ。同声明によると、「クリスマスから新年の期間はハードなロックダウンを行うべきだ。12月24日から少なくとも1月10日までの期間、ドイツ全土の完全なロックダウンを実施すべきだ。それに先立ち、12月14日からソーシャル・コンタクトを最小限度に抑制しなければならない。これは科学的立場からの最後の警告だと受け取るべきだ。政治が別の決定をしたとしても、科学的立場からもはや何もできない」と言い切っている。

ドロステン教授は新型コロナ感染が欧州に広がって以来、一貫して規制の強化をアピールし、規制緩和を主張する学者や政治家、国民からは最大の敵と受け取られてきた。強迫メールなども受けてきたが、同教授は、「ウイルス学者として語っているだけだ。専門外の問題には言及できない」という姿勢を貫いてきた。妥協を拒否し、自身の信念を貫く同教授は国内ではファンが結構多い(「ウイルス学者ドロステン教授の警告」2020年10月14日参考)。

ちなみに、ドロステン教授は2003年、ハンブルクのべアンハルト・ノホト研究所でSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こしたコロナウイルスの共同発見者として世界のウイルス学史に名を残す学者だ。

ドロステン教授の発言は決して新しくはないが、同教授の警告はこれまで多くが当たってきたことも事実だ。メルケル首相もドロステン教授の支持者と受け取られているほどだ。

欧州は夏季休暇後、新型コロナウイルスの第2波の襲撃に直面し、その対応に苦しんできた。ドイツは可能な限り、経済活動を継続するために通常の商業活動は維持し、新型コロナ対策と国民の経済活動のバランスに腐心してきた(通称・部分的ロックダウン、ロックダウン・ライトと呼ばれている)。ドイツでは英国、フランスのような感染拡大はこれまで抑えられてきた。

それが11月2日から部分的ロックダウンを実施中だ。レストランや喫茶店は閉鎖されるが、通常の営業は認められ、学校も開いている。集会は2家庭、10人以下とソーシャルコンタクトは制限されている。

しかし、メルケル首相は11月25日、部分的ロックダウンは期待した成果を上げていないとして、同ロックダウンの期間を12月20日まで延長を決めたが、今月2日、各州責任者との会合で、ロックダウンの規制を12月20日から来年1月10日まで再延長することを決めた。

同国の累計感染者数は8日午前8時現在、120万2644人、回復者88万8700人、死者数は1万9434人だ。ただし、ここにきて1日平均死者数は400人を超え、新規感染者数は2万人を超えるなど、感染は広がる傾向を見せている。

独国立感染症研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)が9日報じたところによると、ドイツ全土の過去7日間の人口10万人当たり新規感染者数は149・1人。目標の50人からは遠く離れている。最大の懸念は死者数が急増していることだ。RKIによれば、過去24時間で590人が死亡した。その数は同国では最多値だ。新規感染者数も2万0815人と記録だ。

シュパーン保健相は、「クリスマスから新年にかけては1年で最も静かに過ごせる期間だから、この期間、コロナ規制を強化し、接触を抑え、社会全体を静かにし、新規感染者を抑えることができればいい。治療を受ける患者数は減少せず、集中治療患者数は減っていないとすれば、追加規制が必要となる」と述べている。

同保健相によれば、ドイツでは年末から1月にかけ、新型コロナのワクチンの接種が可能と予想している。そのために、ワクチンの認可は年末までに可能となることを期待している。同保健相によれば、ドイツで53カ所に「ワクチン接種センター」が設置されるという。

欧州各国で夏季休暇後、政府のコロナ規制に抗議するデモや集会が開かれ、一部では警察隊と衝突するケースが起きた。ドイツでも抗議デモが発生し、「政府が実施するコロナ規制は国民の自由を制限している」、「マスクの効用すら不明な時、マスクを着けなければならないことは耐えられない」、「メルケル政権はコロナ感染を理由に国民を管理しようとしている」といった批判の声が聞かれた。クリスマスから新年にかけてロックダウンの強化には規制反対派の強い抵抗が予想される。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年12月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。