英国のジョンソン首相の髪型も最近とみに乱れがちな気がするのは年末に期限を控えたEUとのFTA(自由貿易交渉)が不調のままであるだけではなく、英国発のコロナの変異種の発生で国内に混乱をもたらしているからでしょう。私が見ていても申し訳ない気持ちでいっぱいです。英国民もやるせないでしょう。
ただ、他国と違い、国民に「あきらめムード」が強く、大きな反対運動や政権への不満が出ているわけでもなさそうで我慢強い国民性が改めて認識されます。
この変異種のコロナですが、これは同国のゲノム解析グループが発見したもので通常のコロナウィルスと比べ10カ所以上変異が確認されました。ウィルスの拡散に重大な役割を果たすスパイクと称される突起物の一部に変異が認められたことで強い感染力を持つのではないか、ということです。ジョンソン首相は7割強くなったと発表しています。
では同国の感染者の推移です。12月20日時点で36000人/日と過去最高水準となっています。4-5月頃の第一波の時は一日5000人規模でそのあとしばし、小康状態が続いた後、第二波が9月初旬からスタートし、11月12日にピークの33470人を記録します。この後、急速に鎮静化に向かうところは他の欧州諸国と同じです。11月の終わりには12000人程度となっていたものが英国だけ、そこから3倍の急拡大となっているのです。
では死者の数ですが、4月の頃には一日あたり1000人を超える日もあったのですが、こちらも急速に鎮静化、夏の時期は死亡者が一桁の日が多く続いていました。その後、第二波と共に死亡者も増え、多い日には700人近くが亡くなっているのですが、死亡者に関しては感染者にみられるような第三波は今のところなく、12月21日は死亡者数215人とむしろ沈静化の方向に向かっています。
ジョンソン首相も変異種の感染が重症者や死に至らしめるかはわからないと述べており、行方はもうしばし様子を見る必要があります。
BBC放送のウェブサイトにはコロナの変異種は今まで17種類あったとされ、例えば欧州で流行したものは武漢のそれとは明らかに違うものとされています。興味深いのは英国の直近の新規感染者の約6-7割の人はこの新種の感染者であり、通常のコロナウィルスの感染者数はどんどん減少しているのです。この減少具合は他の欧州の感染者数のトレンドとほぼ一致しています。
これから見える可能性は二つで、通常のコロナ(D614G)が欧州全体の人々の行動制限でたまたま鎮静化しているのか、コロナそのものが何らかの理由で収まりつつあるか、であります。コロナウィルスは生き延びるために変異を繰り返すわけですが、亜種となった場合、それがどのような悪さをするかは科学者の間でもまだわかっていません。よって英国の今回の変異種が例えばデンマークで見つかったミンク由来の変異種と同様なものでうまく収拾されるのか、ここは更なる研究と分析が必要なのでしょう。
仮に行動制限でコロナを押し込めているとすればワクチンで免疫の壁を作るしか方法がないわけでこれはワクチン期待ということになります。一方、変異を繰り返すならインフルエンザと同様、今後、長年にわたり同居していかねばならないことになります。
では最後に個人的に思うことですが、なぜ、こんなウィルスが人々に感染しやすくなったのか、根本的な疑問があります。専門家でもない勝手な想像ですが、人々の生活環境が非常に優れてきたことで菌に対する全般的な免疫力が無くなってきていやしないだろうか、という気がするのです。
無菌や無菌に近いものと普段から接触していれば菌に対する抵抗力は弱くなります。「乞食がなぜ腹を壊さないのか」「なぜ、ホームレスは冬に戸外で毛布にくるまっただけでも風邪をひかないのか」と同じロジックです。北米にきて驚いたことの一つにいわゆるアレルギーを持つ人が非常に多いのです。日本のそれとは比較にならないぐらいです。
それは人間が生物体として弱くなっているということの証なのかもしれません。何かといえば西洋医学に基づく薬を投与され、サプリに頼り、自己の生命力、治癒力を強化しなかったことが今回のコロナ問題の根本かもしれません。そうならば、これは我々の健康ライフそのものをすっかり見直さなねばならない大変革もあり得るかもしれません。調子が悪くなったらすぐに医者、薬ではなく、寝て自力で直すというチカラをつけることが案外、次世代の最大のテーマになるかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月23日の記事より転載させていただきました。