あぁ、緊急事態宣言 飲食業は大丈夫か?

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政府が1都3県に緊急事態宣言を発出する予定です。日にちは1月7日あたりが有力で期間は1カ月、今回の制約は飲食店が中心となる模様で学校などは影響を受けず、通常通りとなる見込みです。また、この1カ月という期間は暫定で、状況次第では延期もあり得るとみた方がよいでしょう。飲食業の方にはとばっちりともとれる今回の措置は業界への影響は覚悟しなくてはいけない気がします。

帝国データバンクによると1-11月の飲食店の倒産件数は736件で12月を残して過去最高を更新しています。実は2020年の企業倒産件数は歴史的にみてもかなり少ない件数で収まりそうです。これは政府の各種補助金で生命維持装置があったことや地銀など金融機関の融資による支援あったことが影響しているとされます。その中で飲食業は金融機関の融資が出にくいため、耐えきれなくなり、倒産や自主廃業を選んでいる傾向が出ているものと思われます。

飲食店もいわゆるチェーン展開していたり、しっかりとした経営をしている店もありますが、かなりあやふやな店が多いのも事実です。飲食店の数は全国に65万軒程度はあるものとされますが、コロナで倒産がわずか800件程度だったのはやや違和感を感じます。東京商工リサーチが12月に発表した統計で32%が廃業を検討か、という報道もあるのですが、そもそもの同リサーチの対象が企業であることと飲食店の回答数が20件しかなくデータとしては全く利用価値がないものと思われます。

飲食店の主流は一人や家族で経営する小規模店舗がその大半を占めます。また自宅兼店舗などで昔から細々とやっている方々の平均年齢は一般的なリタイア年齢を超えています。データ的には経営者年齢は60代が37%、50代が21%、70代が18%もあるのです。全部足すと恐ろしいぐらいの高齢化業種ともいえます。

コロナは彼らの背中を退場へと押しやるにはあまりにも十分な力となるはずですが、一律の補助金は不真面目にやっている人ほど得をするという不公平感が如実に表れてしまいます。一方で、ここまで頑張って稼いできたからこれを機に引退という人もいるでしょう。補助金を貰ってから止めるという人も含め、肌感覚としては2-3割の飲食店がなくなってもおかしくないところまで来ています。

ただ、個人的にはある程度の試練はやむなしだと思っています。経営になっていない店はごまんとありますが、その中には年金を今まで払っておらず、飲食店を介した日銭がなくなると生活破綻するというところもあるわけである意味、日本の構造的問題の一つに今回いやおうなしにメスが入ったともいえます。

またネット注文だ、弁当だ、宅配だと時代の要請に合わせられるような店はよいのですが、手垢がついたよれよれのメニューで頑固一徹で勝負しているところはファン層には申し訳ないですが、どうなのかな、と思ったりします。

内食が充実してきているのも近年の特徴でしょう。食品各社の開発、スーパーなどの総菜コーナーが充実しており、外食をしなくてはいけない理由が減ってきています。かつては外食はうまいものが食える、という意識があったのですが、最近はやむを得ず外食する感じになってきています。

今回の緊急事態宣言で飲食業の背中はもう一度押されます。そしてかつては居ぬきの店にはすぐにテナントが入るといわれましたが、むしろ、もう何十年も店舗の改装、改築に手を付けたことがない店がより厳しい状況となれば次のテナント探しも難航し、飲食淘汰の流れはやむを得ないような気がします。逆に店舗や厨房機器などのリースが残っていてやめられず、廃業すらできないという悲惨なところもあるかもしれません。

飲食業は洋の東西を問わず、割と信用度が低いのが実態です。会計士が確定申告などの会計処理を受けたがらないのは金を払ってもらえない、倒産しやすいからとされ、そもそも経営基盤が前近代的な状態のところが多いようです。

今後は外食の位置づけが大きく変わるのが避けられない事態になるとみています。正月早々、残念な話ではあります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月5日の記事より転載させていただきました。