トランプ大暴れ、刑事訴追の可能性も現実味帯びる

ホワイトハウス公式サイトより

アメリカ大統領選挙の結果を確定する連邦議会の合同会議は、デモ隊侵入による混乱による中断のあと、各州の選挙人による投票結果を承認した。共和党議員の一部から出た異議申し立ては、すべて大差で却下された。

たとえば、ペンシルベニア州の選挙人票に対する反対動議を支持する投票したのは、7人の共和党上院議員のみ。テキサス上院議員テッド・クルーズ、ミズーリ上院議員ジョシュ・ホーリー、ワイオミング上院議員シンシア・ルミス、カンザス上院議員ロジャー・マーシャル、フロリダ上院議員リック・スコット、アラバマ上院議員トミー・タベルヴィル、ミシシッピ上院議員シンディ・ハイドスミスである。

つまり、トランプ大統領は92-7票で敗北したのである。1月6日に何かが起こるとトランプ・ファンが信じていたことへの、これが回答だ。

選挙結果への異議申し立てには賛否両論がありうる。アメリカの投票制度には大きな欠陥があるし、とくに、今回は郵便投票の割合が多かったことから、不自然なことも多くあった。ドミニオン社の投票機械の信頼性にも疑惑がある。

しかし、そうした一般的な体制について異議を唱えるのは、投票前であるべきだった。結果に対する異議は、もっと確実な証拠がいるし、それは時間をかけて解明するしかない。それに、両候補の差は選挙人の数においても、各州の票差においても差が大きすぎて結果逆転につながりそうもない。

とはいっても、議会へトランプ支持派が抗議するのは、止めるわけにはいかない。まして、選挙戦中に民主党支持者たちが、社会秩序に反する行動を繰り返し、それに民主党幹部は十分に抑制しなかったのだから、なおさらだ。

しかし、それらは、少なくともバイデン候補などが煽動したこととは云えない。対して、本日、トランプ大統領は、ホワイトハウス前で演説して、「死ぬ気で戦う気で戦わないと国は護れない、議事堂へ行くんだ」と煽動した。

議事堂に侵入して狼藉を働いたなかには、トランプ支持者を騙るANTIFAなどのメンバーも潜り込んでいたという指摘もあるが、仮にそれが本当だとしても、大統領がああいう煽動をしたのだから、弁解にならない。

さすがに、大統領に同調して選挙で不正があったと訴えていた議員数人が、一転して異議を取り下げたし、ホワイトハウスでもメラニア夫人の首席補佐官が辞任を表明したほか、安全保障問題を担当するポッティンジャー次席補佐官も辞任したという。

そして、極めつきは、ペンス副大統領らが大統領免職の可能性について、検討を開始したと報じられたことだ。CNNなどの報道は大げさだが、こういう事態になるとペンス副大統領もその可能性は選択肢として検討の俎上には上げるのが当然だろう。

憲法修正25条は大統領が死亡したり辞任したりして職務遂行ができなくなった場合の手続きを定めている。同4項には、副大統領と行政機関のトップの過半数が大統領は執務不能と判断すれば、副大統領を大統領代行に選べることになっているのである。

ペンス副大統領などが、トランプ大統領が正常な精神状態でないと考え、20日の退任前に免職にすべきだとの声がでたのである。

この脅しに動揺したのか、バイデン次期大統領の当選が連邦議会で確定したあと、大統領の側近のスカビノ氏は、ツイッター・アカウントを停止されているトランプ大統領にかわって、大統領の声明を投稿した。

「選挙結果にはまったく同意できず、私は正しい。だが、今月20日には秩序だった政権移行が行われるだろう。私は合法な票だけが集計されるまで闘い続けると常に言ってきた。これは大統領の歴史上、最も偉大な1期目の終わりである一方、アメリカを再び偉大にするわれわれの闘いの始まりにすぎない」と政権移行に同意する意向を示した。

しかし、トランプ大統領がまた何をするか分かったものではない。今後も執拗に過激な選挙結果へ異議を唱え続けるだろうし、とくに、共和党議員には、中間選挙などで自分に忠実でないと落とすと恫喝を繰り返すだろう。

そこまでやると、共和党のなかでも、トランプ大統領に消えてもらわないと共和党自身がもたないという声が強くなりそうだ。

ジョージア州補選で二人の共和党候補が落選して、上院の主導権を民主党に明け渡したのも、トランプの責任だと普通は考える。

そうなると、トランプ大統領を刑事訴追する材料はいくらでもあり、普通なら、元大統領だから許す、あるいは、訴追されても恩赦するということが可能だったことも、容赦ないことになりかねない。

トランプの功罪はいずれも多いが、少なくとも、遺産もあるのに、それが台無しになることも心配だ。