都心中古ワンルームマンションの価格は、ナゼ下がらないのか?

新型コロナウィルス感染拡大で、東京の中心部から郊外に移動する人が増え、不動産価格は下落すると言われました。しかし、今までのところ都心ワンルームマンションの販売価格は下がっていません(写真は私が投資している神楽坂の物件)。

これには、次のような理由があると思っています。

理由1.変わらない金融機関の担保評価
投資用マンションはローンを借りて購入する人がほとんどです。金融機関の物件評価価格が下がれば、借り入れ可能金額も下がり価格も下落します。

現状では、金融機関の都心中古ワンルームマンションへの評価は、低金利の継続と市場価格の安定から1年前とほとんど変わっていません。

理由2.家賃の高止まり
家賃が下がれば賃貸利回りが低下し、価格にもマイナスの影響となります。しかし都心中古のマンションの家賃は、都心3区などの中心部では上がり過ぎた反動から若干下がっていますが、全体ではほとんど変わっていません。

理由3.購入希望者の増加
在宅勤務の拡大により、時間が増えた人たちが、資産運用に興味を持ち始めネット証券の新規口座開設数は急増しています。金融商品だけではなく、投資用不動産にも興味を持つ人が増えてきています。

理由4.売却するオーナーの減少
既に不動産を保有している人たちは、慌てて売却するより、安定した賃料収入を引き続き得た方がメリットが大きいと考え、売却物件数が減っています。

これらの要因が相まって、投資家の都心・中古・ワンルーム購入ニーズは強く、販売会社が高く仕入れても、売れてしまうことから、販売会社間の仕入れ競争が激化しています。

自社で買取も行っている一部の会社以外は、仕入れコストは、ほとんど変わりません。商品のクオリティもほとんど変わりませんから、価格で勝負するしかありません。自社の利益を削って、価格を下げ、薄利多売で販売数を増やす動きが出てきています。

これは個人投資家にとって、購入コストの低下というメリットになります。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年1月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。