菅義偉 VS 小池百合子

政府サイトより:編集部

水と油、不毛の戦い、面白くもなんともない、菅総理と小池都知事の全くかみ合わない関係なのですが、なぜか週刊誌はあまり取り上げていません。しかし、国と東京都という巨大自治体の対立が生み出すものは政治の迷走と国民の混乱以外の何物でもありません。どこかに収束することはあるのでしょうか?多分ないでしょう。

この二人がいつからウマが合わなかったか、それはわからないのですが、表面化したのは小池氏が1回目の知事選を戦った2016年とされます。私も覚えていますが、自民党は元総務大臣の増田氏を擁立、全面支援をしたものの、小池氏が290万票という圧勝を収め、第一ラウンドは陰で増田氏を支援していた菅氏の完敗となりました。

その後、小池旋風は確かに話題になったのですが、決して素晴らしい采配を振るったとは思っていません。その最大のグダグダの一つが築地市場の豊洲移転問題でした。いつ動くのか、築地の市場関係者は再三再四振り回されました。しかし、小池氏の食に対する「安心安全」は少なくとも東京都の高齢者や女性支持者をうまく巻き込むことに成功したと思います。

希望の党旋風も結成の時とその後では評価は激変、今では名前が残っているだけのただの団体になっています。一方、都議会を主活動の場としている都民ファーストは現在の議席数が49で全体の39%を占めています。未だにこちらの旋風は健在というところでしょう。この辺りは時として大阪の維新の会と共に地域政党とも称されたのですが、都民ファは勢力という意味では比較できても維新とは中身が全く違う点に於いて未だにその存在感が十分にあるとは思えません。

多分、その一つに大きくわかりやすい柱となる政策がなく、どちらかと言えば地味なイメージが強いからだと思います。「東京大改革」を掲げていますが何がどれだけ変わったかを指摘できる人は少ないかと思います。一部で電柱の地中化が進んだことはありますが、それが東京の大躍進につながるものはありません。

そのあたりは書き出せばきりがなく、政権のおひざ元の温度が違うことにいら立つ菅総理は常に目の上ならぬ「目の前のたんこぶ」なのでしょう。しかし、それをつないでいるのは二階幹事長である点を皮肉と言わずしてなんと表現できるのでしょうか?

今回の緊急事態宣言発出に関する両者の電話会談でも言った言わない、と双方の言葉の理解が食い違っています。挙句のあてに面談の際には俺は会わないから西村大臣に任せたら小池さんらの勢い押され「緊急事態宣言の検討をする」と言わされてしまいました。菅総理はさぞかしご立腹だったと思います。しかし、世論は真逆で菅総理のコロナのドライビングテクニックに疑問を持ち、どちらに味方をするかと言えば結局、より保守的でわかりやすいメッセージを一本調子で放つ小池氏に軍配が上がってしまうのです。

問題は次の戦いであります。それはもう1-2か月後に始まるオリンピック問題であります。両者とも開催について今のところ否定的なコメントは一切放っていません。これは非常に微妙な問題だけに小池氏も内心、開催は厳しい情勢にあると思っていても、東京都の立場、経緯、経済的損失を含め、簡単に口にできないでしょう。

小池氏はその点、「賢い」戦略をとるはずで、もしも中止となれば、自分の意志とは関係なくオリンピックが開催できなくなったということにするはずです。これはもう断言してよいと思います。では誰がその判断をするかと言えばIOCとオリンピック組織委員会の森会長、そしてコロナが収まらないという国の事情に擦り付けるのであります。挙句の果てにその経済的損失の補填の一部を政府に求めるというシナリオはあると思います。もしもその通りになれば小池氏の完勝です。

菅総理と小池都知事、バトル自体、小池氏の方が有利に見えます。それは菅総理が総理の立場で東京都の批判を正面切ってできないからです。最近、テレビに生出演してチクリと蚊がさすような嫌味の一つ二つを発しているようですが、それが精いっぱい。一方、小池氏は大手を振って「これは政府の問題」と言い切ってしまう太さがあります。

みている方の国民や都民からすれば賛否両論でしょう。小池氏が体質的に受け入れられないという方はかなりいらっしゃると思いますが、政治などというものは49人の敵を51人の同志で勝ち抜くことをいうわけで高齢化が進む東京都に於いて「安心安全」に勝る武器はないのであります。

とすれば菅総理はどういう戦略を取ったらよいのか、ですが、いっそのこと小池氏を取り込む戦略にしても面白いと思います。菅氏の性格からは絶対にできないと思いますが、発信力ある女性を敵に回すのは政治などの戦いに於いてはかなり不利になります。理由はSNSでのシンプルメッセージ性で女性はとにかくわかりやすいのが好きで同性からの支持を得られやすいのです。菅氏は裏で画策をするタイプでこれは一世代古い政治スタイルだと思います。その点からも菅氏が小池氏を利用するぐらいの器量の良さを見せないとこのバトルは菅ファンにとってはおもしろくないものになりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月10日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。