インドネシアの故・スカルノ元大統領第3夫人でタレントのデヴィ・スカルノさんが、昨年の大みそかに都内のホテルで「カウントダウンパーティー」を開催したことが、物議を醸している。1月10日のTBS「サンデー・ジャポン」に出演したデヴィ夫人は、パーティ開催の意図をこう語った。
「私はこういう時期だからこそ、勇気を持って開催したんですね」 「私たちのような人間がこういうことをして、そしてお金が回って、みんなが幸せになるっていうか。やっぱり自粛自粛自粛で全てを止めてしまったらば、本当に経済破綻してしまうと思うんですよ」
新型コロナによる自粛・自粛で苦境に立つホテルや関連する飲食業者などを支援したいという夫人のその気持ちは分かる。しかし、何も約90人もの大人数を集めるパーティでなくとも良かったのではないか。
夫人は、感染対策に関しては「ホテル側も一生懸命にやってくださって。検温や消毒、テーブルの感覚や列を並ぶときも1メートルの間隔をとっています」と述べていたが「大いに盛り上がったせいもあってか、マスクはしない雰囲気になっていました」という関係者もいるようだ(デヴィ夫人が〝年越し密パーティー〟開催「私は火星から来たから大丈夫」東スポweb1月6日)。
「サンデー・ジャポン」の中で”薄口政治評論家”の杉村太蔵氏が夫人のパーティー開催を批判した際、夫人は「私のパーティーは10日前です。誰も感染していません」と反論。それはただ偶然で運が良かったからかもしれない。夫人は更に「私のところのパーティーにいらした方は、みなさん自意識が高い、みなさん緊張感を持って、自覚しています」「若い方たちも緊張感を持っていただきたい」と語った。
しかし、本当に緊張感を持っている人なら、飲食を伴う多人数のパーティーに参加しないだろう。今は、職場での数人の飲み会も自粛する会社員が多い時なのだ。夫人は若者にも緊張感を持てと言うが、緊張感を持つべきなのは夫人ではないか。若者批判をする前に、自らの行動を振り返るべきではなかろうか。
明日1月11日は、成人の日である。成人式の開催をめぐっては、加藤勝信官房長官が5日の会見で、その判断を各自治体や主催者に委ねる考えを示した。それを受けて、多くの成人式の延期や中止が発表され、11日に成人式を断行する横浜市などの自治体には、ネット上を中心に、反発や不安の声が寄せられている。
コロナ禍で大学生活の楽しみを奪われたり、新社会人としての出鼻をくじかれたりと苦難が続く新成人は、一生に一度の晴れ姿を同級生や親に見せる場を奪われ、たとえ成人式に出席できたとしても、その後、同級生らと旧交を温める楽しみの機会すら自粛を求められる。デヴィ夫人は大人として、新成人に、「緊張感を持て」という資格があるのだろうか。
東スポの記者からの「コロナを恐れていない感じがうかがえる」との取材質問に対し「かからないと自負しております。火星から来た別世界の人間ですので。オホホホ」(前掲 東スポ記事)と仰ったというデヴィ夫人。別世界の人間だとしても、新成人の皆さんを前に、大人として恥ずかしくない行動を自覚していただきたいものだ。
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濱田 浩一郎(はまだ・こういちろう)
兵庫県出身 。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。