私が大好きな仕事、それは書評。依頼があると、いつもテンションが上がり。ワクワクする。
2019年から地元の北海道新聞で「鳥の目 虫の目」という書評コラムを担当している。今月はさらに、年に何度かオファーを頂く共同通信社配信のものもあり。
北海道新聞では石戸諭『ルポ 百田尚樹現象』(小学館)と・・・。
東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)を取り上げた。こちらも、構成作家は石戸諭で。彼だからこそできた本だと言っていい。
詳しくは北海道新聞に掲載されたものを読んで頂きたいのだが(読めない環境の人も多いと思うが)、ここでは、少し切り口を変えて論じることにしよう。
この2冊は、セットで読むべきだ、読まれるべきだ。『平成・令和の日本の言論空間』という上下巻の本だと思って読むと面白い。
百田尚樹と、東浩紀という賛否を呼ぶ2人にスポットをあてつつ、この30年間の日本の言論空間を検証した本だ。百田尚樹やその周辺の人物、ファンを通じて、「右傾化」「保守化」と言われる現象を検証することによって、「ごく普通の人」が百田尚樹や小林よしのりのコンテンツになぜ「感動」したのかが明らかになる。賛否、肯定・否定は別として、彼らのコンテンツが売れてしまったこと、市場が存在したことは直視しなくてはなるまい。
後者はなんせ、東浩紀の「戦記」として面白いし、負けっぱなし(失礼)ではなく、何度かの「反撃」もあり面白いのだが。「知の観客」をつくりだす、「言論」を食べられるものにするという彼の挑戦が並大抵ではないことに気付いてしまう。やや穿った見方をするならば、石戸による百田尚樹本と、東浩紀本は「食えるネトウヨ論壇」と「食えない若手論壇、文化系クラスタ」という対比にも見えてしまう。
2冊セットで読むことにより、日本の言論空間がよくわかる。こうしている間にも、SNS上はコロナ関連で論争だらけだが。その背景にあるものを読み解く上でも有益だろう。
共同通信社では平川克美『株式会社の世界史』(東洋経済新報社)の書評を。沖縄タイムスに掲載されたようだ。他にも数社、載ることだろう。
圧巻の教養書だった。「株式会社学」の教科書である。これまでの400年、これからの100年をまさに総合的、俯瞰的に捉えたものだった。
新型コロナウイルスショックのことは、帯にしか書いていない。ただ、これくらいの超長期スパンで捉えることにより、この意味することが、よく分かる。結果として、コロナと株式会社を読み解くガイドになっている。
さ、今年も読書を楽しみますかね。空気を読む前に本を読むのだ。
編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2021年1月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。