飲食店“狙い撃ち”で緊急事態宣言は効くのか?

昨夜、2021年初回の「深層NEWS」(BS日テレ・日テレ24)に出演させて頂きました。去年の6月ぶりでしたが、今回はスタジオ内の別室からリモート出演。

【ゲストは自民党・新型コロナ対策本部本部長代理の武見敬三さんと私。右は飯塚読売新聞編集委員】

テーマは『飲食店“狙い撃ち”で緊急事態宣言は効くのか』

右松キャスター:「Go T0イートで飲食店を後押ししていた政府が今回、なぜ飲食店への人の流れを重視するのか。その根拠の一つが、イギリスの科学雑誌ネイチャーに発表された論文です」

私もスタンフォード大学とノースウエスタン大学が行った9800万人への疫学・流行調査の同論文を読みました。そして、番組内でもはっきりとコメントさせて頂きましたが、表面上のグラフや数字だけを見るとフルサービスのレストランが感染拡大の問題のように見えてしまいます。しかし、それがこの論文のポイントではないのです。この調査が訴えているのは「狭い場所に、一気に訪問客が増えてしまうこと」が問題であって、むしろ、一斉に全ての飲食店に時短や休業を強いても効果は少ないという事なのです。

長くなるので詳細は割愛しますが(全文はコチラ)、興味深い例が米国の所得格差における感染率の違いです(低所得者層の方が高い)。その要因は基礎疾患保有率の差ではないかとされてきましたが、普通に考えると重症化率ではなく感染率にその差が大きく出るのはおかしい。本調査によると、低所得者層が住むエリアの飲食店は比較的店舗面積が狭く、混雑時間帯が集中し、滞留時間も長い傾向があることが感染拡大の要因になっていると結論づけています。
つまり、基本的な防御策を店側とお客様が取ることが前提ではありますが、人を集中させないことが最も効果的な感染抑制策になるのです。そして、それは飲食店に限らず、全ての業種と施設に言える事ではないでしょうか。

ここをコロナ対策分科会と政府が真剣に講究していれば、緊急事態宣言の発出のあり方は変わったはずだと思います。

これも番組内で言いましたが、私は日々街を歩き、人の流れ等をチェックしていますが、三連休はさほど人が減った印象は受けませんでした。しかし、どこを覗いても飲食店内だけは大幅に客数が減っていました。実際に我々の店も売上が前年比で4割から5割下がりました。逆にスーパーやサービス業のお店では非常に混雑している風景が見受けられましたし、運動や施術の際にマスクを外されている方が驚くほど多かったです。

本日、たまたま見たTV番組で取り上げられていましたが、インタビューを受けた街の人々が
「(特に20時以降)飲食店に行かなければ大丈夫なんでしょう?」
という受け答えをしていましたが、それが率直な国民の理解なのでしょう。

【バイキングMORE(フジTV)より】

因みに、ネイチャーの論文ではジムが感染拡大スポットの第2位になっていて、カフェやセルフ型のレストランより上に位置していますが、今回は要請の対象にはなっていません。揚げ足を取りたいわけではありません。ジムも時間帯によっては一気に人が集中する事もあろうかと思いますが、その場合の感染リスクをどう捉えるのかという事です(私は狭いジムのトレッドミル上でマスクを何回も外す人を見たことがありますし、汗をかいた手でガッチリと掴まれたマシンはウイルスの付着率が高く、軽く拭いたぐらいで十分な除菌ができるとは思えません)。

つまり、飲食店に限らず様々な業種で「時間帯人数制」を導入したり、アクリル板の設置や十分なソーシャルディスタンスを取ることが可能な店舗に関しては時短要請をしないなどの明確な基準(逆にそれができない小型店には休業要請し、固定費全額を協力する等)を作った方が、感染拡大を防ぐには効果的ですし、国民の行動変容へのメッセージに繋がるはずだと思うのです。

経済を回すために、他の業種を規制しない分のしわ寄せを一手に飲食店に背負わせるというのであれば、その考え方も理解できます。しかし、それには、今の協力金では十分ではありませんし、雑すぎます。一社あたりではなく一店舗あたりに変えて頂いたことは一歩前進で良かったですが、やはり家賃や固定費だけで数千万円〜数億円払っているところと、10万円〜20万円のところでは、差がありすぎます。前回のブログに書かせて頂いたように、日本版PPPを実施するタイミングにきているのではないでしょうか?(これも番組内で言及しました)。

よく政治家は「異なる店舗ごとの制度をつくったり、個別の対応をするのは難しい。また、スピードを重視した」などと言いますが、このような仕組みは2、3ヶ月もあれば十分に制度設計ができたはずです。昨年の緊急事態宣言が発出された後、感染者数の増加が少し落ち着いていた中での半年間は一体何をしていたのか…憤りを感じずにはいられません。このままでは感染者数を減らす効果が薄い中、経済だけが悪化していく事になりかねません。

やっと1週間後に国会が召集されます。苦境と矢面に立たされている業種や人々に対してどのような支援や予算組み替えをして頂けるのか、しっかりと注視し、提言していきたいと思います。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2021年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。