親や祖父母を介護している「ヤングケアラー」の新成人がいる現実を知ってほしい

奥村 シンゴ

itakayuki/iStock

昨日は成人の日でしたね。122万人の新成人の皆様、おめでとうございました。

今年は、新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言再発令の影響で成人式の中止や延期が相次いでいますね。一生に一度の晴れ舞台がなくなったり、いつになるかわからなかったりと不安を抱く新成人の皆様が本当に気の毒です。

ところで、同じ年代で、成人式はおろか学生時代や社会人生活をろくに送れず、親や祖父母の介護を頑張っている人たちがいるのをご存じでしょうか?「ヤングケアラー」と言います。

「ヤングケアラー」の明確な定義は、日本においてありませんので、今のところは若者介護全般を指すといっていいでしょう。

そこで、「ヤングケアラー」当事者として、現状、体験談、対処法をご紹介しますので、是非成人になった皆様、興味や関心をもっていただきたいと思います。

両親以外のケアラーが最も多い

あなたが明日、突然「ヤングケアラー」になってもおかしくないのですよ。

総務省が2017年に実施した「就業構造基本調査」では、15~29歳の介護者が21万100人いるとされています。

さらに、2020年7月に埼玉県が高校生の約5万人を対象に日本で初のヤングケアラーの調査を実施。昨年11月の中間報告では、ヤングケアラー(過去にヤングケアラーだった者も含む)で4.1%の1969人、高校生の25人に1人、30人学級で1人いるとなると少なくはないでしょう。

さらに、少子高齢化が加速する日本において、今後ますます増加の一途をたどるのが予想されます。

埼玉県の調査で、誰がどのようなケアをしているかをみると、「祖父母・曾祖父母」36.9%が最も多く、両親以外の介護に明け暮れているのです。

それではなぜケアが必要になったかをみると、「病気」が28.6%と最も高くなっています。

また、筆者の知人で高校生時代に祖母の介護生活がスタートし、20歳を過ぎてからは、父親・母親・兄の3人を介護した人、12歳~18歳の学生時代真っただ中な年代を親の介護に費やした人がいます。

理由としては、「病気」、「家族への想いの違い」、「家族関係の複雑さ」があります。

両親以外を若者で6年間在宅介護

ヤングケアラーの一例を紹介します。

筆者は、30歳過ぎから在宅介護をほぼ1人で6年間経験しました。

なぜなら、母親が脳梗塞で倒れた直後に祖母が認知症を発症し、一気にダブル介護が必要になったからです。

家族構成は、母親・祖母・弟・妹・筆者の5人家族で、筆者が小学校の頃母親が離婚し母子家庭になりました。

母親は、咽頭がん・拒食症・大腸がんなど大病を度々発病し、けっして体が強くなく祖母が「孫育て」を一人でしてくれました。

加えて、筆者は、祖母からたくさんの愛情を注いでもらっていました。兄弟喧嘩した時も「シンゴくんの味方だからね」とかばってくれたり、物を買ってもらったりするのも一番先、大学進学も兄弟で筆者だけ。

ですので、筆者は「祖母を一日でも長く一緒に時間をすごしたい」と思いが強かったのです。

ただ、兄弟によって祖母への愛情が異なり、筆者の兄弟(弟と妹)は結婚して子供がいるので、介護に参加できず筆者一人で介護するに至ったのです。

ヤングケアラーを生みださないために

それでは、ヤングケアラーを見つけたら周囲はどういうサポートをしてあげればいいか。

まず、ヤングケアラーを家庭内で生み出さないようにするには、「家族会議」が不可欠です。

万が一、介護が必要になった場合に備えて下記を参考にしてください。

  1. キーパーソンの決定(主介護者)。
  2. 親にもし介護が必要になった場合、在宅か施設かの希望を聞いて同意書を書いてもらっておく。
  3. 親が急病で倒れ、意識回復が難しい場合や認知症が進行し理解が難しくなった場合、延命治療を必要とするかどうか、同意書を書いてもらう。
  4. 在宅もしくは施設費用が親の年金で賄えきれない場合、誰がいくら支払うのか。
  5. 相続は誰が引き継ぐのか。

また、ケアラーを孤立させないように学校や職場の理解が不可欠といえるでしょう。

介護者とやり取りや取材をしていると、「学校で親を介護していると噂が広がり、先生も助けてもらえずいじめられて不登校になりました」、「職場が親の介護を理解してくれず、けんかして結局自己退職にさせられ、自殺未遂した」などの意見が寄せらせています。

あるいは、国や行政の金銭的な支援はかかせず、外国によっては介護は労働とみなし、月給制にしている国もありますので、早急に検討していただきたいです。

ヤングケアラーになった場合の対処法

もし、それでもやむをえずヤングケアラーになってしまった場合、何かと戸惑うと思いますので、下記にまとめておきました。

  • 介護が必要になった場合は、他の家族・学校・職場に助けを求める。
  • 至急地域包括センターや役所に連絡し、ケアマネージャーをつける。
  • ケアマネージャーと密に連絡をとり、介護サービスを選び利用方法を決める。
  • 介護サービスを1カ月の上限サービス内でフル活用し、仕事・学校・余暇時間を確保する
  • SNSで積極的な情報発信(筆者は、ブログ・ツイッターで発信を続け、今の仕事にたどり着きました。仕事以外にも何か情報がほしい場合も発信する習慣をつけましょう)
  • 家族介護者の会、オレンジカフェ、家族介護者支援のNPO、日本ケアラー連盟などに連絡し、介護者と情報を共有したり、愚痴を吐く。
  • 介護はストレスがたまりますので、発散方法を見つける、オススメは自分の好きな事(音楽を聴く、運動する、コロナ感染対策を万全の上少人数で飲みに行く)を思いっきり満喫する。

「ヤングケアラー」は、けっして他人事ではなく身近な問題であると意識してほしいと思います。

成人になった皆様、30代前半から親以外の孫介護8年間の奮闘記や介護者の新型コロナ対策まで一冊にまとめた拙著「おばあちゃんは、ぼくが介護します。」(株式会社法研)をぜひお読みください。

全国の紀伊国屋・ジュンク堂書店やアマゾンなど発売中で、読売新聞全国版他複数のメディアに取り上げられ、書店ランキング1位を獲得しました。

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