新型コロナウィルス感染拡大のニュースに隠れてあまり注目されていませんが、日本国内の電力供給が逼迫しています。
1月12日の各電力会社の電力使用率は、100%に近づいています(図表は日本経済新聞から)。これが現実にどの程度の危険水域なのかは素人には判断できませんが、100%を超えると、電圧の低下によって停電のリスクが高まるとされています。
調べてみると電力不足の原因は、原発停止、LNG不足、そして規制緩和の3つが複合して起こっているようです。
まず、東日本大震災の原発事故以来、原発による発電比率が低下しています。国内の発電はLNGの依存が高まっている中で、世界的な供給不足から価格上昇しています。
そのような中で、国内の電力は自由化によって新電力が参入し、卸市場でマーケットメカニズムに基づいて売買されています。自由化によって競争原理が働くのは良かったのかもしれませんが、以前は地域の各電力が負っていた供給責任を誰も取らなくなる構造になってしまいました。
今回の需給バランスの変化で、日本卸電力取引所(JEPX)の指標価格は、1kwhで154.57円と、何と1カ月前の約25倍に急騰しています。
規制緩和で参入した新電力小売事業者は、市場価格を利用者料金に直接反映する特殊なプランも提供しています。このプランの利用者は、1月分の電気代が2倍以上になる可能性もあるそうです。新電力自体も急騰した電力価格で仕入れしなければなりませんから、逆ザヤになって経営破たんするところが出てきそうです。
最近になって大手電力10社でつくる電気事業連合会が、節電を呼びかけていますが、規制緩和によって構造的に発生するようになった供給不足を解決しなければ、停電のリスクはこれからも避けられないと思います。
国内に寒波が到来し、大雪が降っている地域もある中で、万が一停電が発生すれば、暖房を電力だけに頼っている人は凍死するリスクにさらされます。
緊急事態なのは、新型コロナウィルス感染拡大より日本国内の「電力供給不足」ではないでしょうか?
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。