罰則規定と医療への支援で新型コロナ終息へと向かうか

田原総一朗です。

田原氏公式写真、官邸サイト

政府は、ついに1月7日付で緊急事態宣言を発した。菅義偉首相は、ぎりぎりまで緊急事態宣言は出したくなかったはずだ。しかし、12月31日、東京都の新規感染者は、初めて1000人以上となり、1337人。1000人を軽く超え、一気に1300人台になってしまったのだ。

実は、内閣も分科会の尾身茂会長たちも、年末年始にここまで感染者が増えるとは予想していなかった。年明けも、新規感染者はおさまらず、ついに7日には2447人。緊急事態宣言を出さざるを得ない状況となった。

安倍内閣が昨年4月に緊急事態宣言を出したのは、欧米より2カ月遅れだった。ためらったのは、基本的人権をおかすことにつながり、また国の危機的な財政事情もあった。だからこそ野党もまた、発令には反対だったのだ。

緊急事態宣言を出すということは、国民の生活を制限することであり、いってみれば「有事」である。欧米は、戦争だけではなく、感染症との闘いもまた、有事だと位置づけている。しかし日本は、敗戦後、「戦争をしない国」となった。そのため法制上、「有事」を想定していない国として、戦後75年間やってきた。

戦争ではなく、「感染症との闘い」という事態でも、やはり法律で人権を制限できないのである。しかし、今回の感染者激増の衝撃は大きい。前回は特措法を改正し、罰則を設けることに野党、メディアは反対だったが、今回は立憲民主党をはじめとする野党、メディアも反対していない。それだけ危機的状況なのだ。

何より医療が逼迫している。増えたとはいえ、日本の感染者は欧米より桁違いに少ないのに、なぜ危機的なのか、という疑問がある。実は、日本全体の病床数は約90万床あるのだが、新型コロナウイルス感染者に充てられる病床は、そのうちわずか3%しかないのだ。

ドイツは医療制度を改革し、新型コロナウイルスを治療できる病院を増やした。日本はこの1年近くの期間に同じような改革ができなかった。なぜこの1年近くの間にできなかったのかという批判は、当然あるだろう。だが今できる最善のことを菅首相はやろうとしている。今回の緊急事態宣言により、1都3県において、感染患者を受け入れるベッド1床あたり最大で1950万円補助する。従来の補助額は最大1500万円だったが、450万円上乗せするのである。これはかなり思い切った政策だ。

今回は、罰則規定を設けること、そして医療にお金を使う政策を打ち出している。安倍内閣との大きな違いは、この2点だろう。これらの政策が、奏功することを祈りたい。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2021年1月13日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。