6指標で唯一直接変えられるのは病床数だけ
緊急事態宣言の判断基準となっているコロナ感染状況6指標――(1)1週間あたりの新規感染者数 (2)ウイルス検査の陽性率 (3)病床の逼迫度 (4)療養者数 (5)感染者数の前週比 (6)感染経路不明者の割合――の中で唯一、政策で直接コントロールできるのが、(3)病床の逼迫度、すなわち病床数(病床使用率の分母)です。
感染者数などは結果として出てくるものなので直接コントロールはできませんが、病床数なら政策で増やすことができます。医療逼迫というのは比率の問題なので、対応可能な病床数が増えれば逼迫を回避することが可能です。
しかも、医療体制の整備は政府のコロナ対策の大原則であったはずです。昨年2月の新型コロナウイルス感染症対策の基本方針では、感染速度を遅くしてその間に医療体制の整備を行う、という説明がなされていました。しかし日経新聞の報道などでは、むしろ昨年よりコロナ対応病床数が減っているといいます。この1年近く、ばく大な経済的犠牲を払って時間を無駄にしただけだったのでしょうか。今からでも遅くありません。医療体制の整備に取り組むべきです。
「事業委託方式」でコロナ対応病院を増やせ
コロナ対応病院(または病床)を増やすにはどうすればいいか?
日本の病院の大半を占めるのは民間病院ですが、経営リスクをおそれてコロナ診療ができないのであれば、国が経営リスクを肩代わりするしかありません。具体的には、国が病院全体あるいは一部を借り上げてコロナ対応病院とし、コロナ対応医療委託事業として、経費を全額事業委託費の形で支給するようにします。さらに、事業により院内感染等で風評被害が出た場合に備え、保険を整備します。
これなら民間病院もリスクをおそれることなくコロナ診療に協力することができ、病床数を増加させることができます。医師会も記者会見で国民の行動を批判するだけでなく、事業への会員の参加や医師の派遣を募るなど事業に協力すべきです。
繰り返しますが、感染者数などは結果指標であり、政府が直接コントロールできるわけではありません。政府は今、直接できること、すなわちコロナ対応病床数を増やすことに集中すべきです。
ー
千葉 一平 シンクタンク勤務