コロナ。正月。またコロナ。家に居る時間に比例して増えるのが「体重」です。
「ダイエットしなければ」。そうお考えの方も多いのではないでしょうか。
筆者も、35年ほど前にダイエットしました。体重は15キロほど減ったものの、体調を大幅に崩し、いまだ軽い後遺症が残っています。原因は、無茶な「計画」と、「体調チェック」を怠ったことです。その背景にあったのが「根性論」でした。
筆者は中小企業診断士として、企業の経営計画作成や財務状況のチェックなど、経営者のお手伝いをさせていただいています。その仕事目線で、自身のダイエット方法を思い起こすと、あきれます。
「なんと計画やチェックが甘かったことか」
今回は、筆者の失敗例を通じ、根性論だけで推し進めるダイエットがどれほど危険か、考察したいと思います。
量を減らすダイエット
現在は、ダイエットに関する情報が充実していますね。最近は、糖質制限やバナナダイエットなど、「何を」食べるか(食べないか)という、食べるものの種類を重要視しているようです。
一方、筆者がダイエットした頃、重要視されていたのは「量」です。量を減らす、減量。この単語からイメージするのは、ボクサーですね。試合前のボクサー、とまで行かなくとも、相当の精神力を要する。辛さは根性で乗り切る。当時のダイエットは根性論でした。
筆者のダイエット計画も、「根性」を前提にしたものです。
半分、その半分、さらにその半分
当時、20歳の学生だった筆者の体重は標準を15キロオーバー。立派な肥満体です。
たまたま自宅にあった”肥満児向け減量法”の本を参考に立てた計画は、
「最初の1週間、『極』少食で体重をドーンと減らし、モチベーションを上げる。残り3ヶ月を少食で過ごし、目標体重まで減らす」
というものです。
健康面、空腹感の辛さ、など考慮しない。つまり、危険かつ実現可能性が低い「無茶な計画」を立てた。これが1つ目の問題点です。しかし、当時の筆者は、根性・気合で乗り切れると過信し、実行に移しました。
根性で標準体重に到達
1最初の1週間は、段階的に食べる量を減らす。今日食べる量は、昨日の半分。明日はその半分。明後日は、さらにその半分。昨日食べたご飯が2膳なら、今日は1膳。明日は半膳、とする。最終日は断食。
残りは、通常の4分の1~3分の1ぐらいの食事量に抑えるという無茶な減量を、体力的にフラフラになり、激しい空腹感で「食べる」夢を見て目が覚めるという精神的にも追い詰められた状態になりながら続け、予定の3ヶ月を待たずして、目標の標準体重に到達しました。
しかし、自分の健康・精神状態が「チェック」できていない。「無茶な計画」に続き、2つ目の問題点がありました。
甘いものを寄こせ
数日後、ある会合を手伝わなければならなくなりました。作業終了後、テーブルの上に、山ほどのコンビニおにぎりや菓子パンなどが置かれていました。どうやらお礼の意味らしい。ダイエット中の身としては困りました…が。
「お礼だから。1つぐらい食べなければ失礼だ」
当然、1つでは済みませんでした。おにぎり5個。菓子パンも5個。その他、目のまえのものを全て完食。抑えていた食欲が一気に爆発しました。
「狂ったような」食生活の始まりです。
ともかく食べるのをやめられない。特に甘いものが食べたい。シュークリームを3つ食べた1時間後に、ケーキをホールで平らげる。気持ち悪くなり、トイレでもどす。その直後にまた食べる。体重は反転、急増。体形が、元に戻りつつある。
そのうち、いくら食べても満腹感が得られなくなりました。これは、ただのリバウンドではない。友人によると、”摂食障害”というものらしい。エルビスプレスリーもそうだったとか。晩年、太ったり痩せたりを「くり返した」、とのこと。
これはまずい。現在、自分はその「くり返し」の1周目ということか。普通で、規則正しい食生活に戻さなければ。15キロ減った体重は、10キロリバウンド。肥満体に戻りつつある。これもまずい。そこで、
「『痩せた人』を目指すのではなく、『小太り』まで体重を落とし、それを維持する」
そのような「戦略」に切り替えることにしました。さて、どうやって「小太り」まで体重を落とそうか。
「何を」食べるか
これまで行ってきた、ダイエット方法は「どれだけ」食べるか。食べる量を減らす方法でした。少ない量を3ヶ月続ける「根性」は筆者にはありませんでした。そもそも、自分の「根性」ほど当てにならないものは無いのかもしれません。
食べる量をさほど減らすことなく、辛くないダイエット法はないものか? そこで出会ったのが、故鈴木その子氏の著書でした。
鈴木その子氏は、「美白の女王」として有名です。しかし、それ以前は、料理研究家かつダイエット方法の勘案者でもありました。
氏のダイエット法は、「どれだけ食べるか(=量)」よりも「何を食べるか(=種類)」を重視します。極端な減食を行わない。その代わり、油分は極力食べない。そして、食べ物の8割を「ごはん」にする、というものです。糖質制限ダイエットが流行っている現在、信じられない方も多いことでしょう。
しかし、効果はありました。
1週間で、体重が3キロほど減少。鈴木式ダイエットの効果なのかはわかりません。ご飯を多めに食べることで、異常な食欲が抑えられたこと。やや規則正しい食生活が送れたこと、なども要因ではないか、と推測しています。
目標の「小太り」状態まで痩せられた。うん。体重はこのままでいい。あとは、規則正しい生活で、摂食障害から抜け出そう。そう考えました。
ちょうど、そのとき見かけたのが、春休みの観光地のアルバイト案内です。住み込みで食事つき。住み込みなら、生活が拘束される。食事つきなら、食べる量を抑えることができる。普通で、規則正しい食生活ができるはず。そう思い、申し込むことに。これは好判断でした。
7時から11時まで
アルバイト期間中は休み無し。繁忙期は、朝7時から夜11時までの労働。現在だったら、「ブラック」ですね。しかし、筆者にとっては、食事が1日3回、規則正しく提供される「理想的」な環境でした。
1ヶ月のバイト期間を終え、自宅で体重計に乗ってみると。
「7キロ減っている」
重労働のせいでしょうか。体重が減っている。予想外です。私の体は、増減を繰り返した挙句、最終的に15キロ減り、標準体重になりました。リバウンドした直後だから、脂肪も落ちやすかったのかもしれません。
PDCAにあてはめると
筆者がとったダイエット方法は、以下の問題点がありました。
・危険かつ実現可能性が低い「無茶な計画」を立てた
・自分の健康・精神状態を「チェック」しなかった
経営手法の1つ、PDCA(※)に当てはめると、計画(=Plan)、とチェック(=Check)に問題があった、というところでしょうか。
友人が、”摂食障害”だと「チェック」してくれた。おかげで、痩せた人ではなく、小太りを目指す、という「計画」に変更できた。住み込みアルバイトという、良い環境に身を置くことができた。など、筆者のダイエットは、幸運に恵まれたため、大事に至らず済んだわけです。
健康に痩せる
ダイエットから35年。いまのところ、リバウンドせず標準体重を維持できています。
しかし、今でも軽い後遺症のようなものが残っています。
まず、甘いもの好きになった。以前は、全く興味が無かった、チョコレートやケーキや羊羹。食後、これらが欲しくなる。また、食べ過ぎると、満腹なのか空腹なのか、わからなくなるときがある。摂食障害の名残なのか、記憶がそうさせるのか、よくわかりません。最も困っているのは「冷え性」です。運転や、パソコンを操作すると、季節にかかわらず手が冷たくなる。今の時期は辛いですね。
それでも、この程度で済んだのは幸運です。
上述の、鈴木その子氏は、摂食障害でご子息を亡くされています。料理研究家である自身が、料理で息子を救うことができなかった。そのことが発端で、生み出されたのが「鈴木式ダイエット法」であり、書かれた書籍が「やせたい人は食べなさい」だそうです。
優秀な経営者・ビジネスマンであっても、ダイエットやトレーニングとなると「根性論」に走ったり、頑張りすぎてしまう方が少なくありません。
「根性」に依存することなく、無理のない計画を立てる。体調を管理し、問題があったら「戦略」を立て直す。そのようなダイエットを行い、健康に痩せていただきたいと思います。
[ 参考 ]
※ PDCA(P:Plan=計画、D:Do=実行、C:Check=チェック・評価、A:Action=改善)