「トランプ後」のアメリカと世界はこうなる

2021年01月23日 14:01

バイデン大統領の就任式が無事終わり、トランプ前大統領が戒厳令も出さず、ホワイトハウスに籠城することもなく、自分に恩赦も出さずおとなしく去ったことで、トランプ勝ち組は茫然自失のようだ。

ホワイトハウスを去るトランプ氏(NHKニュースより)

といっても、まだ諦めず、軍事クーデターを期待している方もおられて、アメリカ軍はなおトランプに忠誠を誓っているとか真剣にいっておられる方もいるが、さすがにほとんどの方は、あまりにも何も起きなかったので、デマを広めていた人たちに不信感が増しているようだ。

トランプは1月6日の暴動で、共和党の候補として再出馬する可能性を著しく減じさせたし、キングメーカーとしても力を持ちうるか疑問になった。といっても侮りがたいが。それより刑事訴追されるかがこれからのポイント。自分で恩赦をなぜしなかったかといえば、それは州法違反には適用されないから、かえって墓穴掘るという解説もある。危ないのはそちらかもしれない。いずれにせよ、政治的にはトランプは死んだのかもしれない。

私もバイデン陣営が汚いことをしたことは否定しないし、とくに、マスコミやGAFAなどが、トランプを葬り去るためなら何をしてもいいという勢いだったことはアメリカの民主主義に深い傷を残すと思う。しかし、トランプを正義の体現者というには、お粗末に過ぎた。脇が甘すぎる。

そして、弁護士たちも弁護料を稼ぐことが狙いだったようなふしがあるし、フェイクニュースを流し続けたYouTuberたちも閲覧回数狙いが多かったことは明白だ。日本のリベラル系マスメディアもよく似たものだが。

私はもともと、バイデンの勝利を予想していたし、トランプの方が日本に良いとも思っていなかった。トランプが日本にとって都合が良いことが多かったとしても、それは安倍晋三が首相の場合であって、ほかの人が首相であれば、トランプの気まぐれの被害は免れないから、トランプの方がいいという理由はあまりなかった。

だいたい、バイデンとハリスが極左だとかいうことになぜなるのか?バイデンはどう見ても、良くも悪くもワシントンの常識人だ。頭は良くなさそうだが、義理堅いし誠実だ。

バイデン氏ツイッターより(編集部)

経済政策で社会主義的だとかいうが、国民皆保険、最低賃金の引き上げ、富裕層課税の強化、パリ協定への復帰などのどこが社会主義なのか。

バイデンは賢明にも、ウォーレンやサンダーズのような扱いが厄介な老人を閣僚にはせず、一安心だ。ただ、このままでは彼らもすまないから、もう少し下のレベルでは急進派を処遇せざるを得ないだろうし、次の大統領選挙が近づいてくると話はややこしくなり始めるだろう。

ハリス副大統領が親中派だというのも、誰も根拠を示していない。むしろ、インド系だからインドに傾斜する可能性が大きいし、それなら中国にとっては煙たいことだ。また、彼女の親分であるペロシ議長は、アメリカの高官で初めて広島の原爆慰霊祭に参列してくれたし、中国の人権問題には厳しい。

だいたい、アメリカが中国に厳しくなったのは、オバマの第二期からのことだ。というか、骨はないがそつのない胡錦濤から、未熟な世襲政治家である習近平にかわって仮面を脱ぎ捨ててしまって、中国の正体がばれたと言うことだ。

中東政策についても、エルサレムに大使館を移すのは、民主党も含めて要求してきた話だし、ダグラス・エムホフは副大統領の配偶者として初めてのユダヤ人だ。ただ、サウジにはバイデンは少し距離を取るだろう。世界最悪の人権侵害国のひとつだ。

中東は気分的にはともかく、イランやパレスティナへの中東諸国からの支持が拡がるとは思えないし、かといって、彼らが現実路線になるとも思えず、悪化はしないかもしれないが進展は難しい。

日韓関係の改善をバイデンは望むだろうが、日本は「オバマの仲介で交わした慰安婦合意の履行が先。日韓基本条約もケネディ・ジョンソン政権の顔を立てて韓国に大甘にしたのに反故にしようとしているのは文在寅だ」といっておればいい。少なくとも文在寅政権の間に何かする必要はない。

ヨーロッパ各国は、コロナに関心が集中している。しかも、世論は日本ほどでないが情緒的で、正しい政策をしているかどうかとは関係なく動く。とりあえすの焦点は、来年のフランス大統領選挙だ。

マクロンの評判はいいわけでないが、よほどのことがない限りは第二回投票には残るだろうし、もう一人がマリー・ルペンだとしたら、それに負けることはない。マクロンはサルコジらと組んで中道右派に接近し、環境派も離さないという作戦。左派のスターとしてにわかに注目されているのが、イダルゴ・パリ市長だが、「(マクロンに近い)政治勢力としての環境派」を攻撃して、無党派環境派の支持を上げ、左翼票をまとめとかいう「高等戦術」がうまくいくか?

いずれにせよ、マクロンもメルケルもいなくなると、EUの舵取り役不在になって少しやばい。

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評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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