政府は22日、新型コロナウイルス対策の強化に向け、新型インフルエンザ対策特別措置法と感染症法の改正案を閣議決定した。2月初めにこれらを成立させ、同月中に施行することを目指しているが、休業や営業時間短縮に応じない事業者や入院拒否への罰則導入が柱となる。
感染症法改正案では、感染者への入院勧告に伴う罰則を導入し、知事の入院勧告を感染者が拒否したり、入院先から抜け出したりした際の刑事罰として「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と規定する。
菅首相は22日の参院本会議で
「個人の自由と権利に配慮し、必要最小限の私権制限としたうえで、支援や罰則の規定を設けた」
と述べた。
私はこれ自体が、大きな私権制限となるのではないかと思う。行為と罰が釣り合わないと感じるのだ。コロナ対策強化のために、特措法の改正を行うわけだが、これらのことが、真のコロナ対策になると政治家は本気で思っているのだろうか。日弁連も、即日、「感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明」を出した。
入院勧告を感染者が拒否することがなぜ1年以下の懲役の罪になるのか。入院拒否によりどれほどコロナが広まるのかというデータはあるのだろうか?科学的な根拠というものを、しっかり把握した上で、政府はこれらの改正案を出しているのだろうか。入院勧告に従わない感染者に罰則を科す前に、重症者向けの病床増床や、今現在、入院を希望しても入院できない感染者がいる問題を解決するべきだ。
休業や営業時間短縮に応じない事業者への行政罰についても、補償とセットでない休業、時短要請は、憲法29条で保障された国民の経済的自由権の侵害であるという指摘も根強い。
もちろん、公益のためには私権を制限しなければいけないことも、時(例えば戦争や大災害)にはあるだろう。有事においては実効性を高めるためにも罰則が必要という声があるのは承知しているが、コロナ禍に乗じて、政府は権力(強制力)の肥大化をはかろうとしているのではないか。そのような疑惑が次々と浮かんでくる。懲役や罰金の規定が残るならば、改正案は廃案にするべきだ。