子どもへの性被害根絶を目指して。「キッズライン」の今

緊急事態宣言下にあり、どうしても新型コロナウイルス問題に世間の関心が集中しているなか、かねてよりその運営に警鐘を鳴らしていた株式会社キッズラインに関して、またしても由々しき報道がありました。

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キッズライン、児童福祉法のシッター届出未確認4年半。経沢社長「コンプライアンス第一でなかった」 2021.1.15

「キッズライン」 一部のベビーシッターが未届け 2021.1.19 FNN より

「ベビーシッターマッチングサイトの「キッズライン」に登録している一部のシッターが、法律で義務づけられた届け出を行っていないことがわかった。キッズラインに登録するおよそ4,500人のシッターのうち、一部で、児童福祉法でベビーシッターに義務づけられた都道府県などへの届け出を行っていなかった。」

昨年末に、キッズラインは、以下の報告をしておりました。

弊社登録ベビーシッターの一部の届出状況に関するお詫び 2020.12.28
「当社ではシッター登録時において、シッターが自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届(以下、設置届)の写しのデータアップロード提出を必須とし、必ず自治体へ提出するようシッターに案内しておりましたが、その後自治体に受理されるまでを当社にて確認することができておりませんでした。」と弁明しておりますが、これまで2度も同社所属シッターが幼児への性犯罪を起こして一年も経っていいないことでもこの「不手際」に、子どもの人権を最優先として地方政治活動をしているお姐としては開いた口が塞がりませんでした。

これまでのお姐のキッズラインに関しての問題提起は以下のblogでまとめております。

東京都ベビーシッター利用支援事業の認定基準の見直しを求める緊急請願を東京都知事に提出しました 2020.06.17

強制わいせつ事件シッター会社への都の対応に動きあり! 2020.07.09

そこで、ずっと定点観測をしておりましたので、今般の事案を受けて改めてご報告いたします。

繰り返された児童への性被害

キッズラインについて 昨年6月12日に、目黒区のマンションで5歳の女の子への強制わいせつ行為で、東京都がベビーシッター利用支援事業を認定している株式会社キッズラインが提供する、マッチングアプリを通じて派遣されていた30歳の男性ベビーシッターAが警視庁に逮捕されました。同社のアプリ事業では許しがたいことに別の29歳の男性シッターBも、2019年11月、東京 中央区のマンションで5歳の男の子の体を触るなど、わいせつな行為をしたとして、2020年4月に逮捕されたほか、2019月11月、足立区に住む別の保育園児の男の子にもわいせつな行為をしたとして、再逮捕されていました。

警視庁によると、2020年4月下旬から先月にかけて、ベビーシッターとして派遣されていた目黒区のマンションなどで5歳の女の子の体を触るなど、わいせつな行為をしたとして、強制わいせつの疑いが持たれて、当時、女の子の母親は、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務をしていたため、ベビーシッターを紹介するマッチングアプリを通じて、8回にわたってA容疑者の派遣を依頼。母親の目が届かないマンション内や近くの公園のトイレで繰り返し女の子の体を触ったとみられ、調べに対し、容疑を認めたうえで、「気持ちをおさえきれなかった」と供述していました。この容疑者は保育士の資格を持っていて、2019年7月ごろキッズラインのマッチングアプリに登録、犯罪が発覚するまで、これまでにおよそ80人の子どもの保育にあたっていたそうです。

かねてより、お姐は同社代表取締役経沢香保子氏においては、東京都女性ベンチャー成長促進事業(APT) に参加している点についても懸念を持ち公明・公平性につき質しておりました。

現在、東京都ベビーシッター利用支援事業は19区市町村が本事業を実施、小池知事鳴り物事業であったにもかかわらず令和元年度利用者は290名にとどまり、同社も含め15社が認定されております。2019年の強制わいせつ事件が発生した際に「認定取り消しはしないのか」上田が確認したところ「都は、ベビーシッター利用支援事業の参画事業者として、株式会社キッズラインを認定。なお、都が認定した事業は、株式会社キッズラインの事業の内、「請負型事業者」に係る事業であり、「マッチングサイト」に係る事業ではない」から、問題はないということでしたが、児童のされたゾッとするような行為とその計り知れない精神的苦痛、肉体的被害を鑑みれば「子どもの権利条約」、児童福祉法、児童虐待防止法、「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」等の理念や個別規定に反する極めて重大な子どもへの性的虐待(暴力)事件です。

同じキッズラインのシッターサービスでも「マッチングサイト」と都の利用支援事業は別の事業としていても、結局逮捕者Bは、東京都の支援事業でもシッター業務を請け負っていたのです!

リニア中央新幹線工事をめぐる談合事件で大手建設会社幹部が逮捕された際、都発注の公共事業ではなかったものの、都の事業指名停止となる厳しい基準が設けられ、厳格に適用されていました。公共事業以上に大切な子どもの命、心身の健康・成長発達、人権を守り、子どもの最善の利益を最優先に確保するために早急に、ベビーシッター利用支援事業においても、入札参加者指名停止基準に準じた同様の厳粛な対応が求められるものではなかったでしょうか?

逮捕者が二人もおり、逮捕者Aはキッズラインとは別の場所で犯行を繰り返し、被害児童は合計七人に上る点からしても、2019年11月時点で東京都が看過したことは大問題。

少なくとも2019年の事件発生時に、認定取消や当面の事業委託を注視するなど厳しい処分を東京都が下していれば、管理体制も早急に見直され二人目の被害者を防ぎ子ども達を守れたはずはずです。

キッズラインへの都の甘い措置

急ぎお姐は、ベビーシッター利用支援事業の認定取り消しも含めて、東京都は事件後適切な措置を講じたか、進捗について確認していましたが、 さすがに全国的にセンセーショナルに報道され、世論に押された東京都は、ベビーシッター利用支援事業(ベビーシッター事業者連携型)サービス提供約款に基づく立入調査を実施し、その結果、認定事業者は、本事業に従事するベビーシッターに、保育の質の向上、事故防止等の研修及び指導を受ける機会を提供し、常にサービスの質の向上に努めなければならないとするサービス提供約款第8の第2項等に適合しない事実を確認したため、速やかな改善を指示。あわせて、改善までの間は、本事業における新規の利用契約を停止し、保育の質向上等に優先して取り組むよう指導したということですが…ほとぼりが冷めたころを見計らってか2020年12月22日にアッサリ新規受け入れ開始の許可を与えてしまったのでありました。キッズラインは、この新規受け入れが始まるのを待っていたかとも思われかねない6日後に冒頭の「不手際」を公表したのでありました。

マッチングサイト事業は関係ないと都は言い切れない

東京都は毎度、マッチングサイト事業には関与しないといっていますが、そもそも子どもという命を扱うベビーシッターという仕事にネット上のマッチングサービスはなじまない、破綻しているスキームと私は考えております。事実、都の他の認定事業者はどこも「マッチングサービス」を行っていないことがその証左です。しかも、 キッズラインはマッチング契約の場合は手数料30%を毎回取りながらも、「一切の法的責任をとらない」としています。利用者に責任の全てを押し付けるシッター事業者をに東京都は認定出していることにより「マッチングサービス」も東京都のお墨付きだと多くの利用者は誤解することとなっており、実際に事件が二度も発生したのです

同じマッチングサイトを担うスマートシッターさんは「法的責任はスマートシッター側にある」としています。マッチングサービスだから責任取らないというのは詭弁に過ぎずこのような保育理念の事業者に引き続いて東京都がベビーシッター利用支援事業の認定を与えることに大きな危機感しかありません。

東京都自身が行っているように別の事業であるはずの「マッチングサイト事業」に結果お墨付きを与えてしまっていることの自覚が著しく欠如していることから、この点を質すと「都は、ベビーシッター利用支援事業の事業者として、令和2年10月末時点で17事業者を認定しています。そのうちマッチングサイトを運営しているのはキッズラインのみ」と回答。 逮捕者Bについても「強制わいせつ容疑で逮捕されたベビーシッター2名のうち1名が、ベビーシッター利用支援事業に従事していたことを確認している」としていながら、キッズラインの認定取消にも及ばず、新規受け入れ停止も昨年12月に解除し、無罪放免にしてしまいました。

責任の所在をもとめようやく認定取消手順設置

これではとても質の担保もできなとお姐は食い下がります。

お姐「「マッチングサービス」事業の場合でも子どもの命と尊厳にかかわることですし、実際に重大事故を発生させた会社が法的責任を負うと思料しますが、事業における責任の所在につき、都の所見を伺います。

都福祉保健局「マッチングサイトを通じたベビーシッターの利用は、マッチングサイトの利用規約及びベビーシッターと保護者による個人間の契約等に基づくものであり、事故が発生した際の法的責任については、その利用規約等により規定されるものと認識しています。
(お姐直訳:そんなの関係ねぇ!東京都は責任ありません)

今般事件を受けて、参加事業者認定基準を見直すべきと考え、現時点の福祉保健局の所見を確認したところ、都は、認定事業者への指導監督を強化するため、令和2年9月11日付けで、ベビーシッター利用支援事業(ベビーシッター事業者連携型)サービス提供約款を改正し、立入調査から認定取消しまでの指導等の手順を明記しました。具体的には、指導を行っても改善されない場合の改善勧告、改善勧告に従わなかった場合のその旨の公表や、認定取消し要件の追加等の改正を行っているということ。「認定取消」をお姐がうるさく言い続け、前掲したように6月には自由を守る会より緊急請願も小池都知事宛に提出したことも功を奏し、小さな一歩は踏み出したようですが、伝家の「認定取消」の宝刀を振るわなければ、単なる添え物であります。

シッター4500名に社員数十名…キッズラインの組織体制を危惧

キッズラインの役員の中に、保育の専門家は存在しておらず、同社も認めていますが、保育施設に関しては厳しい基準があるなか誰でも適性が確認されることなくシッター事業を開業していいということは今般の重大事件を踏まえて許されないし、保育の専門家・有資格者を必ず社内におくなど、国に先んじても都に独自の基準を設けるべきと考えるものです。

実際に、キッズラインは現在全国4500名のシッターが登録されています。同社の東京都登録数は9月30日現在、HP上で確認できるだけで約1800人のシッターが登録しています。一方同社社員は約20名です。一人で90名のシッターを管理することになります。この組織体制では、シッターの質のチェックや育成、保育の安全性は担保できるか危惧をするものです。例えば、社員数に応じて、登録させるシッター数の上限を必ず設けるなどのあらたな取り組みを求め、都の対応状況を確認するも、あくまでも都のベビーシッター利用支援事業の参画事業者の認定基準内の責任にとどまる説明に終始、すなわち運営体制に関しては関知しないということなんですね。

お姐総括!

キッズラインは小池百合子知事が、前回都議会議員選挙直前に立ち上げた「希望の塾」塾生参加者のシッター事業も請け負ってました。繰り返しますが、経沢社長はまた、小池知事鳴り物入りの東京都女性ベンチャー成長促進事業(APT) の一期生でもありました。支援事業にエントリーしながら、補助をうけるということには早くから警鐘を鳴らしていたところの今回の2件もの強制わいせつ事件が発生しました。小池知事はかねてより「チルドレンファースト」と標榜され、保育園待機児童問題には力を入れてきたところであります。一方拙速な受け皿を増やすことで子どもが犠牲になる事案は後を絶ちません。一定期間の新規受け入れ停止をしてお茶を濁すだけではなく、保育の質と子どもの安全を守る枠組みへの責任を果たすべく東京都や保育にかかる関係各機関を含めた抜本的な改善講じる必要があります。断固として対応しなければ、喉元過ぎれば熱さを忘れると事業者は油断をし反省することもなく復帰し、新たな被害が必ずや及ぶことでしょう

今般、当該児童に甚大な被害が及び社会的悪影響を及ぼした点につき、東京都の最高意思決定者、任命責任を負う者として同社の認定取り消しを含めた厳峻な処断を今こそ、小池百合子東京都知事は、下さなければならないと、今般の4年半もシッター届け出の未確認を受けてお姐は強く申し上げるものです。

★ママ議員が語る「シッター強制わいせつ事件」★
子育てしながら働いて…そして議員となったママ議員だからこそ、需要を質の担保のバランスを考えてあまねく保育事業をチェックしていかねばなりません。早くからこの問題を自由を守る会議員は取り組んでおりました。ぜひ改めて御覧ください。

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自由を守る会代表 上田令子チャンネル


編集部より:この記事は東京都議会議員、上田令子氏(江戸川区選出)のブログ2021年1月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は上田氏の公式ブログ「お姐が行く!」をご覧ください。