スマホで株式投資ができるのか?

日経に「全米翻弄、スマホ投資家の実像 日米2000人調査 個人の力、市場と世界変える」という記事があります。アメリカの若者はスマホを手に容易に株式投資で儲けているというストーリーなのですが、どう読んでも違和感があります。スマホとデスクトップとノートパソコンで何も違いはなく、いつでもどこでも取引ができる利便性にスマホが長けているだけであります。これはあくまでもディバイス(機器)の相違だけであって、スマホが儲けの秘密というわけではありません。

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私も北米市場で決して少なくない額の投資残がありますが、スマホで決済したことは数えるほどです。理由はスマホ決済をするとなると日計りのような瞬間の価格の追及になりかねず、判断を誤りやすいことがあるからです。もちろん、私が日計り投資銘柄を手掛けているならそれでもいいでしょう。しかし、それは私のスタイルではないし、日計りで儲けられる金額は知れているのです。なぜならば対象銘柄がホットで乱高下が付きまとうことが前提である訳でローラーコースターの中でほとんど神頼みのようなギャンブル性が高くなるからです。

ゲームストップ社の株売買はある意味、悪い影響を残したかもしれません。それは投資の健全性であります。取り立てて買い材料があるわけでもなく、売り残高が多いことを逆手に取って売り方を締め上げるというのはプロレスの悪役を懲らしめる勧善懲悪気取りに見えます。ただ、売り方には理由があって株価が下がる方に賭けているわけであって個人投資家のよくわからない理由でそれを制圧したところで「それが何か?」ということになるのです。

投資の基本は二つあって「閑散に売り無し」という格言通り、今は陽が当たっていないけれどじっくり待てばじわっと上がってくる銘柄を待つという仕掛けと今、ホットな銘柄に便乗し、勝ち馬に乗るというやり方であります。両方ともよさげに見えますが、長短あると思います。前者の場合、いつ陽が当たるのかわからないという弱点があります。後者の場合、本当に勝ち馬なのか読めないというリスクがあります。

私の場合、銘柄次第で使い分けをします。例えば資源株のように商品相場で株価が循環しやすいものは底値が分かっていますのでそこで目をつぶってどんと買えば数年で数倍になることはかなり多いと思います。それも2倍、3倍どころではなく、多いもので7倍、8倍ぐらいまでは吹き上げますのである意味、その性格を知り抜けば最も儲けやすいタイプの一つでしょう。

ハイテク株の場合、どこまで化けるか読めないというリスクがあります。例えばGAFAMの銘柄ですが、私はかつてどれ一つ投資したことがありません。理由は大昔に乗り遅れたこと、そして直近のリターンは知れているということです。例えばアマゾンの場合、昨年7月に3200㌦をつけて、それからは高原相場で今でも3300㌦程度です。半年以上待ってもリターンは3%程度なのです。マイクロソフトやアップルでも昨年8月からは6-10%程度の上昇率に留まっています。なぜか、と言えば時価総額がデカすぎて動きにくくなってきたのです。

日本もそうですが、アメリカの場合、誰が株主なのか、これが重要で機関投資家や年金基金など多数の様々な相場観をもつプロ投資家たちががっちり持っている場合、値動きは極めて緩慢にならざるを得ないのです。そしてそこには理論相場がしっかり根付いており、大きく跳ね上がることも大きく下げることもないのです。

結局、株式投資とは将来を買うわけですが、株価に最も反応するのは刺激性であり、小さな会社が強烈な刺激を受けると打ち上げ花火のようになりやすく、個人投資家の標的になりやすいとも言えます。但し、やけどする可能性も高いことから本質的な投資には向かないと考えています。(個人投資家が株で億万長者になる人が時々、雑誌などで紹介されますが、そこに至るのはプロゴルファーになって優勝するより難しいぐらいの話だと思うべきです。)

ではお宝株をどう見つけるのか、ですが、私はいつも何倍にもなる株を探しているわけではなく、2-3割上昇すればさっさと売却することも多いのです。それは投資期間あたりのリターンを見ているためで10年もって10%のリターンとひと月で10%のリターンの違いのようなものであります。

探し方としては半年、一年後の経済や社会を予想することでしょうか?どこかの会社が何か新製品を開発するなんて予想不可能なのです。10年後の夢を追うというのもあるかもしれませんが、業績に反映するのはいつなのか、と考えるとあまりにも長すぎるのです。例えばアメリカが数週間のうちに連邦政府ベースで大麻の合法化の法案を提出しますので大麻絡みの株はどれも爆上げしていますが、社会的に取り上げたくないので話題にならないだけです。それを探し出すのはレディットのような掲示板ではなく、市場をきちんと見抜いていればわかっていることなのです。

一方、ビヨンドミートのような代替肉銘柄は既に競合との激しい価格競争に揉まれ、スタートアップの時のようなブルーオーシャンではありません。私もビヨンド株は過去、何度も手掛けてきましたが、今は投資対象にならないのです。

私が多分、これが一番堅いと思うのはREITであります。特にリーテール系とホテル系の下はないと思います。REITは一般に配当狙いですが、株価が非常に安く、配当も減配になっているところが多いのですが、それらが変わると見越せば買える銘柄になりうるでしょう。

スマホで株式投資をする方の多くはネタをレディットなど株式掲示板から拾い上げ、「提灯をつける」買い方になりやすくなります。そこには投資の主体性がなく、完全な受動系投資になり、ビギナーズラックで終わることが多いともいえるのです。

株式投資なんてそんな簡単なものではありません。日々、歩きながら、あるいはニュースや街中の動きをチェックしながらトレンドを拾い上げる地道な中でヒット銘柄が生まれやすいのではないでしょうか?これが私の中学校2年生から続けている株式投資で得たスタイルであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年2月9日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。