日本の内向き外交は国益に反する

2021年02月22日 06:00

グローバル化の弊害

グローバル化によって人とモノの行き来が活発化し、多くの人々の生活が豊かになった。筆者のような日米ハーフという存在もグローバル化の進展がなければ生まれてくることがなかったことを考えると、ある意味では筆者自身がグローバル化の恩恵を最も受けているとも言えるのかもしれない。

da-kuk/iStock

しかし、グローバル化という現象に全人類が満足しているわけではない。近年、グローバル化の影響によって社会で取り残された人々の声を吸い上げたポピュリストたちが台頭している。その影響によって生じた問題を解決できていない民主的な政治家に対するフラストレーションから、非民主的な手法を取る政治家に対する期待が高まっている。

そして、グローバル化の波は超大国アメリカまで押し寄せ、トランプ大統領が所属する共和党が従来掲げてきた自由貿易の原則、また世界のリーダーであるべきだとするアメリカの長年の伝統に真っ向から挑戦する人物を生み出した。

加えて、ごく少数ではあるが、太平洋を隔てた日本でも自国の国益を第一に追い求めるトランプ氏のような存在を欲している層が存在する。

確かに、度重なる政治家のスキャンダルで政治不信が高まりつつ今だからこそ、あたかも既存の政治を刷新してくれるかのような期待感を人々に持たせるトランプ的な政治家が日本では魅力的に映るかもしれない。しかし、日本が外交上で追求する国益が何であるかを考えた時、アメリカとの違いを考慮に入れる必要がある。また、グローバル化によって得られる恩恵を軽視するせいで日本の国益というものが何であるかが見えてこないのではないかと筆者は考える。

日本の国益は外にある

全盛期と比べ相対的に弱体化したアメリカではあるが、依然として超大国であることには変わりない。エネルギー自給率、食料自給率は共に極めて高い水準にあり、理論上はアメリカは単独でも自国民を養える力を持っている。また、世界で最も強力な軍事力を持っているため、そのアセットを用いて、世界のルールを自国の都合の良いように書き換えることが可能である。

しかし、孤立主義を実際に国家の政策として追求できるアメリカと違い、日本の場合はそうはできない実情がある。その理由は日本という国に内在する脆弱性が理由である。

日本は外部からのエネルギー資源に極度に依存している国である。エネルギー自給率は11%前後に過ぎず、エネルギー構成の大部分を占める化石燃料の石油の約88%を中東諸国に依存している現状がある。

そのため、ひとたび日本のエネルギー資源が運搬されるシーレーンで有事が起こり、日本にエネルギー資源が届かない事態が発生すれば、経済活動は停止され、イージス艦を派遣してシーレーンを守ることすら危うくなる。一部の統計によるとシーレーンが遮断された際に日本社会が持ちこたえることができる期間は半年ほどだと言われている。

しかし、幸いにも日本はそのような事態に直面することは無かった。それはアメリカのリーダーシップによって東アジアの平和と安定が担保されたことが最も大きい要因のひとつである。

アメリカは戦後、戦争によって荒廃した同盟国のみならず、日本を含めた敗戦国も巻き込んだ経済システム、同盟関係を構築し、特に日本はその恩恵を享受した。アメリカの核の傘のおかげで、日本は国外のことに関心をよせる必要もなく、自国の経済的な発展にのみ集中することができる状況にあった。その結果が世界第2位の経済大国の座の獲得である。

すなわち、日本は外部的環境に深く依存していると同時に、それが安定していたことで繁栄することができた。日本の最大の国益は外にあり、上記で述べた日本の脆弱性が一朝一夕では改善されないことを考えると、これからもそれが国益であり続けるとも言えるのかもしれない。

日本は自国の国益が国際社会の安定と密接にリンクしている稀有な国なのである。

脅かされる日本の生命線

しかし、近年、戦後日本の繁栄の源泉であった、平和で安定的な外部的環境が挑戦を受けている。

ひとつは中国の台頭である。中国は世界の貿易量の約40%、そして日本が輸入する石油の8割が通過する南シナ海を軍事要塞化し、台湾進攻の際の足かせとなるアメリカ軍の動きを制御しようとしている。そして、仮に中国が日本のエネルギー資源、貿易船が通る南シナ海を完全に制圧し、台湾をも勢力圏内に取り込むことができれば、日本の生命線であるシーレーンをコントロールすることが可能になる。また、それを外交カードとして用いることもできるようになる。

また、アメリカの内向き化という要素も東アジアの安定に対する脅威である。巷ではアメリカの戦争に日本が巻き込まれてしまうという言説が流布しているが、現実はその逆である。

誤情報によって始まって、結局は泥沼化したイラク戦争の影響もあり、アメリカは大国としての威信が傷つき、トランプ登場以前から内向き化を進めている。そして、その傾向に拍車をかけるかのように、現在、人種間、党派間の対立が激化したことでアメリカは準内戦状態にあると言われている。

そのことから、アメリカは内向的な国になりつつあり、それによって生じた力の空白を埋めるかのように中国が勢力を伸張しようとしている。

そして、日本が享受してきた外部的環境の平和と安定を担保してきたアメリカの影響力が低下し、それを脅かそうとしている中国によって、日本が置かれている状況はますます厳しくなりつつある。

それに対して日本はどうするか?戦前のように独善的、近視眼的に現状を変えようとするのか?

はたまた、戦後日本が実践したように国際社会に適応しながら合理的、経済的に直面する現実に応じた外交政策を実施していくのか?

確かなことは、日本という国が自国の安全を保障するうえで、平和で安定的な外部的環境を創出することにあり、それに対する脅威となりつつ中国に対抗するためには内向き化するアメリカに加えた多国間での協力が必須であるということである。

日本が外部的環境に深く依存している以上、単独主義的な行動は敵を増やすだけであり、かえって、ブーメランのように日本の国益を損ねるものである。

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