石破 茂です。
今週は予算委員会の集中審議、公聴会、分科会等で委員会に出席している時間が長く、落ち着いて本欄を書いたり、推敲したりする暇があまりありませんでした。乱筆乱文あればご容赦くださいませ。
予算委員会では総務省や農水省の接待問題が多く取り上げられました。公務員倫理規定に反した行為に対して厳正な処分が行われるのは当然のことで、どれほど偉い人やその関係者が同席していようが「規則に反することは出来ない」という規範意識を徹底させなくてはなりません。
私自身のことも含め、政治家の緊急事態宣言下にふさわしくない行動については、主権者である国民に対する怖れの気持ちをもう一度思い起こさねばならないということを申し上げましたが、同じことが官僚にも言えるのかもしれません。
かつて旧大蔵省の接待汚職事案や防衛省の山田洋行事案などが大問題になり、その都度「再発防止を徹底する」としたはずなのですが、時が経ち人が替われば教訓もいつしか風化してしまうということなのでしょうか。
今回の総務省の内部調査は、接待の有無、人数、金額、同席者などの事実の確認のみに留まり、何故2018年に東北新社の子会社がハイビジョン未対応番組の放送認定を受けたのか等の許認可問題には言及がありませんでしたが、問題の本質はむしろこちらにあるのであって、武田総務大臣が「行政が歪められていないかという国民の疑念に応える」と述べたとおり、これを一過性に終わらせることのないようにしなければなりません。
冷厳な数字で人事が評価される民間企業とは異なり、官僚機構における人事評価は、どうしても個人の好き嫌いや相性の良し悪しによる、かなり主観的なものにならざるを得ません。そうであればこそ「公務員はすべて国民全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」との日本国憲法(第15条第2項)の趣旨をもう一度想起し、内閣人事局が対象とする幹部公務員の範囲の見直し、民間人の登用等々、人事制度を再検討する良い機会です。
決して初心を失うことなく、影日向なく、阿諛追従せず、誠心誠意国民のために職務に精励している、人間的にも能力的にも立派な人たちが官僚の中に間違いなくいることも事実です。そのような人たちがやる気を失うことなく、正当に報いられるような組織にしていきたいものです。
いわゆる「グレーゾーン法制」に関する自民党内の議論が進みつつあり、いくつかのご意見も頂戴しております。
あくまで外見は「白い船」のコーストガードを装いながら実は人民解放軍傘下の第二海軍的な存在である中国海警と、我が海上保安庁との間でトラブルが生じ、海上保安庁では質的・量的に対処不可能と判断されて海上警備行動が発令され、海上自衛隊の護衛艦で対応すれば、「先に軍事行動を仕掛けたのは日本である」との中国の宣伝によって我が国が国際的に不利な立場になってしまうおそれもあります。少なくとも、海上保安庁に領海保全的な任務を加えることは、国際法的にも問題がないものと考えております。
コメント欄や頂くメールにもいつも目を通させて頂いておりますが、広くネットで表明される事実に全く基づかない誹謗中傷、罵詈雑言、妄想や一方的な思い込みの類にはいささか閉口致します。お書きになるのはご自由ですし、その方の人間性の問題ではありますが、ネット社会とは本当に難しいものだと思ってしまいます。
書店に行くと「○○を理解できないバカ」等々、この著者はどれほど偉いのだろうかと思わざるを得ないタイトルの本も目につきます。他人を貶めて自らを誇るような言論にはどうにもついていけませんが、あくまで一部ではあるにしても、日本人はいつからこのように謙虚さを失い、尊大になってしまったのでしょう。いかにその本の内容が優れていても、全体的な評価は下がってしまいます。本を売りたいとの出版元の動機はわかりますが、タイトルの付け方にはよく気を配って頂きたいものです。
ライターの久保山雅文様から、徳川家康公の生涯や名言などを紹介した「光を、なげかける 混迷の今によみがえる徳川幕府260余年の英知」(ヒカルランド刊)と題する本をご恵贈いただきました。この本自体、なかなかに味わい深い内容ですが、巻末に載せられている日光東照宮の稲葉久雄宮司の寄稿の中で、平成25年に東照宮の機関誌の83号に私が寄せた次のような一文が紹介されておりました。
「我々は夏の参議院選挙に勝利して政権を安定的なものとし、震災復興や経済再生、外交の立て直しなどの多くの課題に腰を据えて取り組み続けなければならない。今一度国民と共にある自民党を作り直さなければならない。思えば我々自民党は長い間政権にあって、怖れや謙虚さを忘れて『害其身に至り』下野することになった。野党であった間は我々にとって『まくる事』を知る千載一遇の機会であったと思っている。より良い自民党をつくることがより良い日本の礎を作ることであり、そのために与えられた職務を全うしたい。
『不自由を常とおもへば不足無し』。御遺訓を心に」
家康公の言葉である「勝つ事ばかり知りて負けることを知らざれば害其身に至る」を念頭に、政権奪還直後に書いたものですが、しばらく忘れておりました。当時はそのような緊張感と高揚感が党内に漲っていたように思います。思い返すことが出来ましたことを有り難く思います。
今週の都心は三寒四温そのものの気候が続きました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2021年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。