緊急事態宣言解除は「誰が決めるのか」?

3月7日に期限を迎える1都3県の緊急事態宣言を延長するのか、解除するのか。菅首相は大きな決断を迫られています。

緊急事態宣言の検討を表明した菅首相(1月4日、官邸サイトより:編集部)

最終判断への不正確な情報とそれに基づく曖昧なプロセスを見ていると、戦略なき「極めて日本的な意思決定」に大きな不安を感じます。

そもそも判断材料とすべきコロナ感染状況に関するデータ自体が不正確であることが明らかになっています。あまり、メディアでは報道されていませんが、アゴラの池田信夫さんのブログが1番わかりやすく説明しています。

東京都が国に対して確保病床数を過少に報告し、2月26日になって国に報告する確保病床数を500床から1000床に突然増やしたという事実。病床使用率を意図的に高く見せようとしていた疑念があります。そもそも、500とか1000というキリの良い数字に関しても、不正確な数字の可能性があります。

そして、このような不正確なデータをもとに、誰が最終判断するのかも曖昧です。菅首相は「最終的には私が判断する」と述べていますが、不祥事が頻発し、世論に流される決断になりかねない懸念があります。

1都3県の「首都圏知事カルテット」は、緊急事態宣言解除に反対の立場で団結しています。政府が、カルテットを押し切って解除を強行した結果、世論の反発を受けるのを恐れ、2週間程度の延長といった中途半端な決断をする可能性が高いと見ています。

緊急事態宣言による経済へのダメージ、人々の精神状態への悪影響について比較考慮されず、とにかく新規感染者数を減らすことだけに集中している。このバランスの悪さは絶望的です。

そもそも、飲食店の営業時間を午後8時までに制限しても、感染拡大効果がどの程度あるのかも検証されていません。人の行動と感染者数の増減には、因果関係が認められず、緊急事態宣言の延長で営業自粛したからといって抑制効果があるかは、大きな疑問です。

不確実なデータで、曖昧な意思決定を行い、効果があるかどうかさえわからない対策を何となく続けていく。それによる実体経済への悪影響、そして人々のメンタルへのダメージは無視される。

こんな意思決定をされる国に自分の将来を委ねて大丈夫なのか。コロナウイルス感染拡大よりも、戦略なき政府の対応の方が心配になってきました。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。