日本の教育って、ホントのところどうなの?と思っていたら、とてもよいレポートがありました。それがタイトルそのものズバリ、「日本の教育はダメじゃない」です。
教育とは誰でも通ってきた道なので、みんな一家言あります。
教育政策にあれこれ注文をつけるのは私にとっても楽しいことです。
でも、その認識って当たっているのでしょうか?
50代以上の方は信じられないかもしれませんが、現在の学校の教員は、「でもしか先生」ではとても務まりません。胆力、コミュニケーション能力ともに、人並み以上でないと、とても任を全うできません。
その学校教育ですが、メディアや識者からは否定的な見解が多く見られます。そして、現場の実態からかけ離れた政策がとられ続けています。産業育成や大学政策の失敗自体が、初等中等教育の失敗に帰されてしまうのはとても残念なことです。
だって、たとえばアメリカの学校って・・・。
アメリカの高校って、とってもハードボイルドな状況なんですね。
では、日本の学力の国際的な比較を見てみましょう。
昔に比べて学力が低下しているのか
ずばり、低下傾向はないのだそうです。
経時的変化を見るためにピザ(OECD生徒の学習到達度調査)のデータを使います。・・・最初に気づくのは、日本の成績が一貫して下がっているとか、一貫して上がっているという傾向がないことです。・・・とりあえず、日本の成績が一貫して低下しているわけではない、というのは素晴らしいことです。というのも、世界には成績が一貫して低下している国もあるからです。例えば、教育で有名なフィンランドがその代表例です。
詳細は本を読んでいただくとして、こんな初歩的なことを調べても、教育のフィンランド信仰は怪しくなってきます。
本書を読むと、このピザという有名なテストも、なかなかの曰く付きな代物だということがわかります。
これ以外にも、
知識がない/創造力がない/問題解決ができない/大人の学力が低い/昔に比べて学力が低下しているといった私たちの認識を、国際比較から詳細に検討しています。
その結論は、
日本は学力が高い。
でした。
むしろ問題があるのは、私たち大人の「どんな社会を生きたいのか」ということを考えてないことのほうだと指摘しています。
教育の代償は大きいのか?
また、そのための教育が子どもに与える負担感などから、「教育の代償は大きいのか?」ということもしっかりと分析していて、勉強のしすぎ/高い学力は塾通いのおかげ/授業が古臭い/自分に自信が持てない/学校が楽しくない/いじめ・不登校・自殺が多い/不健康といった、日本の学校で問題になっているありとあらゆる事象を検討しています。
その結論は、
教育の代償は大きくない。
となり、日本の学校や子どもたちの現状におおむね肯定的です。本書にはその詳しい分析が書かれています。
教育レベルの高さに気づこう
われわれは悪いうわさや将来予想が好物です。
でも、よく考えたら、凶悪犯罪の割合から見ても、若者は一貫して優しくなっていますし、日本はよくなっているのでしょう。
では、なぜわれわれは悲観的になってしまうのでしょうか。
その一端は、メディアはいつも批判的だからだそうです。
メディアの記事が「日本の学校教育はダメだ」と言っているのは、ある意味では致し方のないことなのです。インターネットや新聞などのメディアは、「何か問題がある。大変だ」という記事を好んで載せます。・・・メディアは社会的議論を喚起するために、教育研究者の意見を掲載することがありますが、教育研究者は一般に、日本の学校教育について批判的です。・・・実際、2013年に行われた内閣府の調査によれば、日本人のうち自国の教育水準を誇りに思っている人は、他国に比べて少ないのです。日本の成績は韓国を除く他の国よりも良いのにもかかわらず、です。
現在行われている現実性のない教育政策が、学校教育の現場を混乱させたり、税金を浪費したり、学校の先生を多忙にしたり、さらに保護者を不安にしたりしています。本当に対処されるべき問題は放置されているのです。
その最大の被害者は、大人ではなく子どもたちです。
この「日本の教育はダメじゃない」をきっかけに、日本の学校教育や子どもたちについて、もっと現実的な認識をして、現実的な政策を作る足掛かりになってほしいものです。
繰り返しますが、産業育成や大学政策の失敗が、初等中等教育の失敗に帰されてしまうのはとても残念なことです。
※私見では、欧米は階級社会だということを忘れて私たちは比べてしまっているように思えます。欧米のアッパークラスの教育を、日本人全員のそれと比べて一喜一憂するのもどうかと思う今日この頃です。