止まらないコロナの政治利用

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・40歳)です。

延長報道に触れて

首都圏知事が3月7日までの「緊急事態宣言延長」を検討している、調整している等の情報が流れた3月3日に、結果とすれば菅総理自らが2週間程度の延長を決断されて広く国民に報告をされました。延長についての様々な意見があるのは承知しております。私はこれまでと同じ枠組みの延長には断固反対であり、次の期間へ国と1都3県の調整にはきっちりと、現場の意見が反映できるようにすべきと考えています。このあたりは動画でも語っています。多くのコメントが寄せられていますのでお時間あれば目を通してみて下さい。

東京都の2ヶ月間

しかしながら、菅総理が賛否両論あるのを分かっていながら、全てを背負って決断された事について、私としては黙って見過ごすわけにはいきません。
そもそも今回の宣言は新年早々に4知事が西村大臣との面会を強行し、宣言発出を強く求めてマスコミも乗っかってきた事に起因します。東京都においては12月31日に1日の新規陽性者が1000人を突破し更に増加傾向が判明し、医療提供体制逼迫が明白になったことによります。

とはいえ、私には特に都庁内の組織運営に疑念があり、本当に持てる力を出し切っているのかなどを調査しては関係各機関の調整を行なってきました。その一例が、都知事の指揮命令下にある都立・公社病院の病床使用についてです。約2ヶ月前の記事ですが、こんな事も発信していました。
東京都が「医療崩壊」…でも小池知事が「まだやっていない対策」がある(現代ビジネス1月9日)

上記なども含め、この緊急事態宣言下で4知事が何をやってきたかという検証が必要であると繰り返し主張しています。特に神奈川県に至っては減少傾向も顕著であり、本来だったら宣言解除へ舵を切っても良い局面だったと現地の記者は解説をしたりしています。ところが「1都3県ワンボイス」という小池知事主導の暗黙の協定があったために突出して解除とは言い切れなかったように見受けられます。

この過程で、見えてきた都のデータ取り扱い問題点なども整理して追及していきます。

突如のスクープ?

今日考えたいのは、その裏で何が起こっていたかという事です。
例えば、3月2日の毎日新聞・日本経済新聞です。

緊急事態宣言の2週間延長を要請へ 首都圏1都3県の知事(毎日)
緊急事態宣言延長を要請へ 1都3県調整(日経)
既に3日を迎える前にこんな記事が出されたのです。

この2紙のスクープを追うように宣言延長ありきの流れが出来て、各マスコミもこの前提で動き始めたのでした。東京都がこの時点で「ワンボイス」調整に駆け引きを交えながら動いていたのは事実です。とは言え、前述のような神奈川県と、直近に新規陽性者数が東京と逆転しまった千葉県とでは温度差があります。このギャップを埋めるべき、あの手この手を尽くしている時に出たスクープ記事でもありました。

結果として、菅総理が先に延長に言及し、延長要請は行わなかったわけですが、この空気作りの記事が東京都庁舎から出された可能性が極めて高い事を指摘しなくてはなりません。ワンボイスへの詰めの協議が難航しかけている際に、外堀を埋めようとマスコミを利用しようとしたか人物がいたのだと思います。森会長後継人事でも「都庁希望は小谷実可子」というフェイクが流れたのも同様だったと考えています。

すかさず、この雰囲気作りに苦言を呈したのは黒岩知事です。

当事者の1人である神奈川県知事が、公式Twitterでここまで言及するのですから間違いないと思います。が、この知事の発信は報道されません。その一方で、ここにもある通り、3日夕刻帯には4知事会議がセットされていて、その場で協議となっていました。その上で、まとまれば西村大臣へ要請という流れが想定されていたわけです。

ところが、ご承知の通り、菅総理はこの知事達の合意前に自身の見解として「延長」を明言されました。
本心は「解除ありき」で動いていたとしか思えなかった菅総理の言動に、私は延長反対の立場ではありますが総理の覚悟を肌で感じました。もし、宣言延長をずっと考えていたならば、尾身会長も以前から慎重論ですし、前週の他府県解除時にも堂々と尾身会長と並んで会見をされたはずです。その場は山田広報官云々ではなく、こちらの1都3県対応が定まっていなかった事が真相のようです。

では、何に覚悟したか。それは、国と首都圏知事達の「対立構造」に終止符を打とうとされたのだと認識しています。1月2日時点では「国は遅い」「小池劇場」「4知事は凄い」といったフレーズがマスコミ発でSNSやお茶の間でもまかり通りました。ところが、私もレポートでまとめたように「やる事をやってくれよ」という心の叫びが菅総理にはあったわけです。私も直接お話をしているので分かります。結局、4知事は言いたい事は言うけど、責任は国にという姿勢は2ヶ月間変わらなかったと言えます。

進むも、下がるも苦しみ

上記の動画でも語っていますが、この3月7日は「解除」「延長」も政治決断としては苦しい選択です。だからこそ、見極めの必要性を語っていた菅総理は、マスコミ主導で「延長」の流れが出来てしまった以上は、いたずらに対立すべきではない。全て自分が背負うという覚悟で4知事の延長要請を待たずして発言されたわけです。1年前のこの時期も、3月3連休時期は警戒を国が都に求めていたにも関わらず、都独自に動く事はなく感染拡大に繋がった事例もあります。そんな事も私の頭にはよぎりました。

この局面になった以上、私は責任と権限を「菅総理」に集中させる事で、早期解除+経済対策に向けて更に強力に進めるべきであると考えています。3月9日の都議会集中審議でも都の体制の課題を指摘していくつもりですが、小池知事が首都圏に広げた以上、道州制が無い日本では中央主導で首都圏を救っていくしかないと思います。

ただ、現場は都県が担っているわけですから、必要な情報を4知事が全て公開し、国・1都3県・国民が一体となって情報の共有が必要です。ここから先は、コロナを政治利用するのはやめて、動ける人は動く、風評を取り除く、声の大きい人達ばかりでなく、サイレントマジョリティの声を掬い上げていく政治に転換すべきです。もう時代が変わった事を認識できない政治家や役人、マスコミは本当に国民の敵です。

最後に興味深い黒岩知事の言葉を引用しておきます。
「これを見る限り、延長は小池知事だけだけが希望していた」ようです。

神奈川県・黒岩知事 緊急事態宣言解除の基準は首都圏4都県で「ステージ2になることが目安」(スポニチ)
黒岩知事は「6対4で解除かなと思っていた」とし、「今回は1つの県だけでは決められない。1都3県で総合的に見て判断しなければならない難しい状況だった」と説明。東京都、埼玉県、千葉県の知事は、それぞれの考えを持っていたとし、「小池知事は延長、大野知事はどちらでもいい、森田知事は菅総理にお任せする、という立場だった。そんな中で菅総理が私が決めます、ということだったので、ではお任せしますということになった」と話した。