モスバーガーの食パンが苦戦する理由

「味は悪くない。だが、リピーター獲得は難しいのでは」

モスバーガーの食パンを食べての感想です。

モスバーガー(モスフードサービス 以下モス)が、3月12日より食パンを発売。予約制で、第2・4週金曜日の月2回、販売します。

モスの、2021年3月期下期(2020年10月~2021年2月)の売上は、客単価増により前年比 111% と好調です(※1)。新市場参入の狙いは、テイクアウトの買上点数を増やすこと。高級食パンの需要を捉えること。そして、更なる客単価増加でしょう。

しかし、高級食パン市場には、すでに「乃が美」「銀座に志かわ」など人気専門店が多数。今回発売した食パンの商品力と、モスの販売力・ブランド力で対抗できるか。

今回は、モスバーガーの食パンについて考察します。

筆者撮影

商品について

まず、味の面から考察します。

味は悪くない。しかし、

・バター好きが求める、「塩バターロール」のようなバターの風味が無い
・スイーツ好きが求める、他店の高級食パンのような甘味が無い
・主食として、普段使いするにはカロリー(と価格)が高すぎる

よって、「リピーター獲得は難しい」というのが筆者の見解です(あくまで筆者の主観・好みに基づきます。SNS等では、「上品な濃厚さ」などと、高く評価されてる方もいらっしゃいます)

kuppa_rock/iStock

カロリーについて、詳しく述べます。

高級食パンの、旨味の要因は「脂肪」です。

大雑把に言うと、脂肪が多ければ美味しい。当然、カロリーも高くなります。

モスの食パンのカロリーは、100gあたり“390kcal”(脂質 14.1g)。一般的な食パン「ヤマザキ ロイヤルブレッド」の“258kcal”(脂質 4g)に比べ段違いに高く、競合する高級食パン「乃が美」の“290kcal”より、100kcalも高くなっています。

1枚で、ご飯軽盛り2膳分のカロリー(※2)。それに見合うほどの「美味しさ」ではない。筆者はそう感じました。

価格について

次に、価格について。

モスの食パンの価格は600円。「乃が美」「銀座に志かわ」の1斤432円(「銀座に志かわ」は1本=2斤864円)よりも高く、強気の価格設定と言えます。

モスの食パン製造を請負っているのは、大手製パンメーカーのヤマザキ(山崎製パン株式会社)です。

大量仕入れと大量生産によるコスト削減能力は、非常に高い。「乃が美」「銀座に志かわ」より、はるかに低コストで製造できるはずです。にもかかわらず、両店より高い価格設定をしている。大手の強みが、活かせていないように思います。

ブランドについて

次に、ブランドについて。

「乃が美」や「銀座に志かわ」には、ブランドストーリーがあります。

乃が美ではお客さまの健康ため、こだわりのオリジナルマーガリンを使います。(中略)トランス脂肪酸を低減(中略)バターのトランス脂肪酸よりも低く設定しています。(中略)コレステロール値は断然低く、体にもやさしいマーガリンです。
美味しさの秘密 | 高級「生」食パン専門店の乃が美(のがみ)

こだわったのは仕込み水に使用している独自のアルカリイオン水(中略)最高級のカナダ産小麦粉の素材にはちみつと生クリーム、バターが融合し生成された神秘的な甘さ。
商品紹介 銀座に志かわ

具体性があるため「ストーリー」が感じられる。だから、ブランド価値が高くなり、贈答品としても利用される。

一方、モスの食パンは、ヤマザキという「メーカー」ブランドが、過度に有名なため、「高級」感を醸し出すことが難しい。先行する専門店に、ブランドで対抗するのは困難でしょう。

今後の対策

では、どのように対抗すべきでしょうか。

モスの強みは、店舗数が多いことです。

「乃が美」の店舗は211店、「銀座に志かわ」は62店と非常に少ない。対して、モスは国内1,263店。うち、食パン販売対象店は、1,000店に上ります。高級食パン店の無い地域までカバーできるうえ、大半の店にイートインがある。

よって、イートインでの食パン提供を行うべきでしょう。本来の目的、「テイクアウトの買上点数増」とは矛盾するようですが、イートインという「強み」の活用は大変有効です。

需要予測の精度を上げ、在庫を持ち、イートインで提供する。食パンは加工が要らないため、従業員負担が軽く、客を待たせず提供できる。忙しいビジネスマンの朝食・ランチにはうってつけです。コロナ対策は必要ですが、短時間利用のためリスクは低減できるでしょう。また、在庫を持ち、予約不要とすることで、テイクアウト時の「ついで買い」が期待できます。

「ちぐはぐ」な印象

「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」という、長い商品名。スマホアプリを使わず、「紙」に記入し、店頭で手渡しする予約方式。そして、期待と異なる味と、競合より高い価格。

食パン市場参入で「ちぐはぐ」な印象を与えた、モスバーガー。

消費者は、どう評価するでしょうか。

[ 参考 ]

※1 モスの売上前年比
月次情報 | IRライブラリー | モスフードサービス企業サイト

※2
摂取カロリー早見表|活動量計カロリズム|株式会社タニタ

参考
バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン | モスバーガー公式サイト