世田谷区議会は予算審議の真っ最中。保坂区長が出席した総括質疑と企画総務領域を終えたところだ。私ひえしまは、来週の区民生活領域(15日)と都市整備領域(18日)で質問する。
総括質疑では、わが会派(無所属・世田谷行革110番・維新=F行革)から桃野芳文幹事長が登板。区立保育園で起きた虐待事件と“世田谷モデル”について質した。ここでは、後者について書く。まず、保坂区長のツイッターをどうぞ。
少々ご立腹な様子にも窺えるが、少なくとも「私の施策は間違っていなかったじゃないか」という思いが伝わってくる。区長は質疑の中で、「私のツイートを推理して解釈しないでいただきたい」とおっしゃったのだが、それは読み手の自由でしょう。
まず前段、「PCR検査は絞り込め」「無症状者に対する検査は無用だ」「検査拡大は資源の無駄遣いだ」と発信してきた人たちとの部分は、誰を指しているのか不明だが、私はこういう乱暴なことを主張している人を見かけたことはない。区長に訊いてみても、やっぱり誰とは答弁しなかったので、わからない。仮想敵はいるみたいなのだが。
続いて後段、今になって「高齢者施設の全員検査」や「無作為の市中検査」が政府から出てきていることに対して、どのような態度をとっているのか。だが、「高齢者施設の全員検査」は、“世田谷モデル”を指していると思われる。
私のブログを熱心に読んで下さっている方々には釈迦に説法なのだが、あえて簡略に説明すると、“世田谷モデル”というのは、大きく「定期検査」と「随時検査」の2本柱から成っており、前者は高齢者施設などに数ヵ月に1回PCR検査を行うというもので、後者は陽性者が出た施設にさらに実施するというもの。そもそも“世田谷モデル”は前者のことを指していたのだが、これだけではあまりにも無意味な検査になる、とわかっていた頭の良い役人が、後者を追加して全体的にバランスよく見えるようにしたものである。
区長が主張してきた本当の“世田谷モデル”である「定期検査」は、区の発表(2月8日時点)によれば、対象施設1500ヵ所のうち、受検した施設は302ヵ所しかなく、割合ではたった20.1%(受検人数だと26.8%)に過ぎない。だから、“世田谷モデル”がそもそもの目的としたクラスター抑止やら、感染拡大防止に成功しているなどとは到底言えようもない。当然、世田谷区の陽性者数が他区に比べて少ないなどというデータは存在しない、ということもこれまで再三述べてきた。
それどころか、区長は「施設が受検するにあたって、相当の感染防止策を講じるところに意味がある」と反論するのだが、そんなことは、導入当初から言っていたことではなく、「何かそういう効果もあるみたいだな」と最近わかってきたことで、それはただの結果論である。
提唱者なのに主旨を忘れてしまったのだろうか。私たちの会派は、陽性者が出て、クラスター化しそうだと見当をつけた施設において、期間を短く区切り、何度も繰り返しPCR検査をしないと無意味である、としつこく指摘してきたのだが、これまた区長にはご理解いただけないようなのである。
さて、「無作為の市中検査」だが、これは“世田谷モデル”とまったく関係ない。政府が言っているのは、あくまで感染の広がり具合を測るための検査のことである。だから、並列で論じることは誤解を招く。どうも区長の深層心理では、多くの人を対象にする検査なら、すべて“世田谷モデル”と同じということになっているようなのだ。さらに、都の唾液検査までも引き合いに出し、これまた仲間のカテゴリーに加えていたので、現在の保坂区長はもはや“世田谷モデル”を正確に理解できなくなっているのでは? との私の「推理」は、あながち間違っているとは思えない。たしかに、ニューヨーク州のクオモ知事に倣い、「誰でもいつでも何度でも」とぶち上げた昨年のお話から、まったく別物に成り果てたわけだから、わけがわからなくなるのも当然ではあろう。
もう一度確認すると、“世田谷モデル”の目的は、クラスター化や感染拡大を防止するためだった。しかし、区からしつこく勧誘しているにも関わらず、希望する受検施設が少なく、見込みが外れて失敗してしまった。4億円以上もの税金投入である。そのことを糊塗するために、あたかも“世田谷モデル”の一環のように、プール方式や都の唾液検査もスタートさせたのはよいが、それぞれ異なる対象者にそれぞれ違った検査を実施し、もはや実施のための実施に陥っているというのが、本当のところだ。全体を俯瞰すれば、何ら統一性も実効性もないままに、区内でいろいろなイベントが、ただただ漫然と開催されているようなものであり、そこでは億単位の血税が臆面もなく浪費されている、という有様なのである。
こういうことを許しておくわけにはいかない。コロナ禍で苦境に陥っている区民はたくさん存在する。私たちは、税金の使い方に関してとことん厳しい会派である。予算審議を通して、その姿勢を毅然と区民の皆さまにお示ししたい。