コロナ一人勝ちの中国
現在コロナ一人勝ちの中国の、アジア進んでは世界覇権獲得への勢いが止まらない。強権で新型コロナを抑え込みに成功(と発表されている)すると共に、ワクチン外交で、世界に味方を増やそうとしている。
その勢いで、尖閣、台湾、沖縄を獲りに来ることは、当然の可能性として警戒しなければならない。
対する西側は、インド太平洋戦略の下、日米豪印のクアッド会合を開き、これを牽制しようとしている。
しかし、盟主であるはずの米国バイデンは、大統領選挙前から中国の脅威を軽視した発言をしており、それはトランプに対抗するための方便の面と捉える向きもあったが、以下の発言によりやはり本音だった事が白日の下に晒された。
「バイデン氏は2月16日、米CNNがウィスコンシン州ミルウォーキーで主催したタウンホール(対話集会)に参加、司会者のウイグル問題についての質問に対し、次のように語っている。
習近平の主要原則は、厳しい支配によって統一された中国でなければならないというものだ。そして彼はそうした行為(人権侵害)に理論的根拠を示す。私が彼に指摘したのは米国の価値観を反映しなければ米大統領として居られないと。その意味で彼が香港で行ったこと、ウイグル西部(自治区)、台湾で何をしているのか、といったことについて私は一つの中国政策を強化することに声を上げる(反対する)つもりはないと言った。(以上、3/13 歳川隆雄氏の記事より引用)
ブリンケン国務長官は、トランプ政権の対中牽制の引き継ぎを明言し実際そう動こうとしているが、親方のバイデンがやる気が無いのだから、実効性はないだろう。
EUも中国の脅威を意識し始めているが、同時に盟主ドイツのメルケルは対中経済協力強化を打ち出し、「命は惜しいが河豚は食いたし」の構えで、中国覇権の抑えは米国にやってもらいたいと言うのが本音だ。
日本でも国際政治学者の三浦瑠麗氏の他、中山俊宏、鈴木一人氏等が、バイデンの国際協調路線によって中国を牽制がトランプ時代よりも高まる可能性に期待を寄せていたが、早くも希望的観測に終わりつつある。
インド・ロシア太平洋戦略
米国の中を覗いてみると、ウォールストリート・国際金融資本は中国の市場が欲しいし、軍産複合体は中東での管理された永久戦争・準戦争状態により兵器弾薬が消費されるビジネス・モデル継続を望んでおり中国との覇権争いには必ずしも乗り気でない。
一方、民主党議会は、ウイグル人権問題に目覚め始めており、対中強硬路線を打ち出しつつある。しかしバイデン本人は、スキャンダルで中国に弱みを握られているのを一旦脇に置くとしても、前述のように「対中平和主義者」なので、議会の関心を逸らすだろう。
具体的には、「困ったときのロシア頼み」で、ロシアを悪魔化しその脅威を喧伝する事で中国の脅威を相対化する。
ちょうどタイミング良くロシアのプーチンは、反体制派リーダーのナワヌルイ氏を毒殺しようとし未遂に終わると逮捕した。一方の中国の習近平は、ウイグル人を百万人以上強制収容している(共に報道される所による)。
報道を基にして単純計算する限り、習近平はプーチンの百万倍の大悪魔、プーチンは小悪魔でなければならないが、米左翼は特に戦略性がなく優先順位と事の大小軽重の感覚が狂っているので、今回も向かう相手を間違える可能性、少なくとも中露を同列に見る可能性が高い。また、EUは前述の商売っ気からロシアを主敵と見做すだろう。
これにより、行き場を失ったプーチンを習近平の方へ押しやり、事実上の「中露同盟」の紐帯を強くしてしまう。
現在第一位の軍事大国である米国が、第二位、第三位の「中露同盟」に対抗すれば勝ち目はない。中露の間に楔を打ち込み「米露・その他 vs 中国」の構図にする事が、古今東西からの戦略の常識である。だが、冷戦頭が抜けきれない米国・欧州は中々この常識が通用しない。日本でも大河ドラマでも見ていれば高校生でも分かりそうなこの常識を分っている識者が少ない。
トランプは、意識的に乱暴者を演じる「マッドマン・セオリー」で通商問題と人権問題の併せ技により習近平を土俵際まで追い込んだが、期せずしてコロナに足元を掬われた。
だが今必要なのは、融和政策でヒトラー・ナチスドイツの台頭を許したチェンバレンではなく、その野望を食い止め打ち壊したチャーチルである。
もしトランプが次期大統領選への出馬を見送れば、後継者は国務長官だったポンぺオが有力だろう。その思考言動は平明だがスクウェアであり、中国人と中国共産党を切り離し中国包囲網構築に積極的外交を展開した。ただ、共和党が選挙をするには福音派の票が必要であり、副大統領候補を誰にするかが問題となる。そのため福音派と親和性が強いユダヤ教徒であるイバンカが浮上して来るかも知れない。
日本としては、何れにせよ自主防衛を拡充すると共に、盟主の米国がお花畑の夢想から完全に覚めるのを待つ間、門前払いされ続けるセールスマンとなるだろうが、「中露vs米・その他」の必敗の構図を崩すべく「中露同盟」に楔を入れ、現行のインド太平洋戦略にロシアを加えた「インド・ロシア太平洋戦略」への拡大に向け、地道に尽力して行くべきだろう。