人物を見極める

先日Twitterを見ていましたら、「相手のウソを見破るポイント」9点が次の通りツイートされていました――①やたら顔を触る、②手をポケットに入れたり背中に回したりして隠す、③ソワソワしだす、④表情と動きが合っていない、⑤頷きや瞬きが増える、⑥言葉に詰まる、少なくなる、⑦応答がギクシャクする、⑧反応が速くなる、⑨饒舌になる。

言うまでもなく世の中嘘つきは沢山いますし、「嘘も方便…嘘は罪悪ではあるが、よい結果を得る手段として時には必要であるということ」の如き側面もないこともないでしょう。しかし人間、嘘をつかれると好い気はしません。ですから、嘘をつくような相手とは基本付き合わぬようにして行くものです。

では如何様に嘘つきか否かを見分けるべきかと言えば、例えば『論語』の「李氏第十六の四」に、「直(なお)きを友とし、諒(まこと)を友とし、多聞(たもん)を友とするは、(えき)なり。便辟(べんぺき)を友とし、善柔(ぜんじゅう)を友とし、便佞(べんねい)を友とするは、なり」とあります。つまり孔子は、「正直な人、誠実な人、色んなことに通暁(つうぎょう)している人を友とするのは有益である。こびへつらう人、あたりさわりは柔らかいが誠実さにかける人、心無く口先だけの人を友とするのは損だ」と言っているのです。「益者三友、損者三友」ということで、私も全くその通りだと思います。

次に此の益者か損者かを見極めるべく如何に処すべきかを述べますと、これまた孔子のに従えば『論語』の「為政第二の十」に、「其の以(な)す所を視、其の由(よ)る所を観、其の安(あん)ずる所を察すれば、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、人焉んぞ廋さんや」とあります。つまり、「人の一挙一動を見て、これまでの行為を詳しく観察し、その行為の動機が何なのか分析する。そして、その人の安んずるところ、つまり、どんな目的を達すれば満足するのかまで察する。そうすればその人の本性は隠しおおせられるだろうか?決して隠せおおせないものなのだよ」と孔子は言うのです。「視・観・察」ということで、人を見抜く基本的な方法として確かにその通りだと思います。

私どもSBIグループでは、社員に時々課題を与え小論文を書かせていますが、それは単にその人の知識レベルを計るためではありません。分かり易い例で言うと、コピペで他人の思考・判断・経験等を手間なく利用し恰(あたか)も自分自身の如く文章に纏めてはいるものの自分で考えた痕跡が略(ほぼ)ない人、他方、多くの論理矛盾を抱えてはいるものの少なくとも自分の頭で一生懸命考え抜いた痕跡が残っている人、がいたとします。その場凌(しの)ぎで上手く行ったら高評価が貰えるのではといったコピペは、ある意味カンニングと一緒で誠実とは言えないでしょう。私はそうした小論文から、その人の関心・好奇心あるいは考える力がどれ程の深さであるか、そしてまた、その人が誠実な人であるかどうかを見ているのです。

以上、「益者三友、損者三友」及び「視・観・察」につき述べてきましたが、率直に申し上げれば、実際問題「人焉んぞ廋さんや」とは中々簡単には行かないものです。人を見分けるは極めて難しいがため、嘘をつかれることも裏切られることも沢山ありましょう。但し、そうした一つ一つを幾つも経て後に多少人を見るの明というのが出来てくるような気がします。ある程度年を取り色々な経験をしてこないと分からぬ側面も多分にあるのかもしれません。我がグループの中では顧問を別とすれば私が一番の年寄りですから、人を採用するに必ずその人物を見極めて行くべく心掛けています。


編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年3月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。