「FIRE(経済的自立、早期リタイア)」で、最高の人生を実現できるのか?

marekuliasz/iStock

「FIRE」というテーマで、雑誌の取材依頼がありました。これは、Financial Independence, Retire Early(経済的自立、早期リタイア)の略で、「最強の早期リタイア術」という書籍(写真)という本が話題になっていることを受けての企画のようです。

クリックするとAmazonページに飛びます

経済的自立というのは、誰にとっても大切なことだと思います。将来のお金の不安を解消できれば、人生の選択肢が大きく広がるからです。

経済的自立を実現するための最もオーソドックスな方法は、リスクコントロールを行いながらの資産運用です。

ここ数年は、起業や株式や暗号資産への集中投資によって、経済的自立を実現する人もいますが、例外と考えた方が良いでしょう。成功者の裏に、その何倍もの失敗者がいる確率の低い方法だからです。

オーソドックスな資産運用の基本は分散です。リスクの異なる資産を組み合わせることによって、リターンを狙っていく。具体的な方法としては、投資信託(インデックスファンド)のような金融資産を活用する方法と不動産を使った方法があります。

最終的に、お金の不安の解消するためには、安定したキャッシュフローが必要です。定期的に安定した収入が得られる仕組みを作ってしまえば、経済的自立を実現できるのです。これは、株式のようなキャピタルゲインによる収益ではなく、不動産のようなインカムゲインからの収益によって実現可能です。

一方の、早期リタイアに関しては、私は必ずしも人生の満足度を高めるとは限らないと思っています。なぜなら、仕事によって社会との接点を得る事の価値は、人生において極めて重要だと思うからです。仕事を辞めれば、その接点が無くなってしまいます。

仕事をしなくてもお金の不安がないという状態がもし実現できたとして、全く仕事を辞めてしまう事は、むしろ人生をつまらなくすると思います。

だから、リタイアするのではなく、自分の好きな仕事だけを自由に選んで、続けていくことを目指すべきです。

そして、何歳までと定年を決めるのではなく、自分がやりたいと思い続ける限りは、年齢に関係なく仕事を続けることができれば最高です。

仕事を通じて、社会貢献や、自己承認欲求といったものが満たされることによって、人生はより充実したものとなるのです。

という訳で、「FIRE」に関しては、前半のファイナンシャルインディペンデンス(経済的自立、FI)には賛成ですが、後半の早期リタイヤ(RE)に関しては、賛成できません。

このような私の考え方が、雑誌の取材でどんような内容にまとめてもらえるのか。今から楽しみです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。