19日の時事通信の記事(「下請法違反でマツダに勧告 手数料名目で5100万円徴収 公取委」)より。
自動車大手マツダ(広島県府中町)が下請け業者に対し、手数料名目で計約5100万円を不当に支払わせていたとして、公正取引委員会は19日、下請法違反で同社に再発防止を勧告した。
記事によると、「同社は2018年11月~19年10月、下請けの資材メーカー3社に対し、手数料名目で計約5100万円を請求し、支払わせて」おり、「手数料はマツダが委託する部品メーカーと3社との取引量に応じて決められ、マツダが毎月請求していた」。「こうした請求は少なくとも昭和50年代ごろから続いていたとみられるが、資材メーカー側にメリットはなかった」とのことである。
マツダ側は公取委に指摘されるまで「違反と認識していなかった」というが、合理性の欠ける一方的な金銭の徴収は下請法違反の典型なので、なぜ違反の認識がなかったのか。大企業にとって下請法は「コンプライアンスでお馴染み」の法律なのだが、その対応はどうなっていたのであろうか。「昭和50年代ごろから続いていた」慣行なので、当然視して意識にのぼらなかったか、あるいは「今更、問題にしてもややこしくなるだけ」ということで敢えて見なかったことにしたか。
「コンプライアンス」と簡単にいうが、こうした掘り起こせない、あるいは掘り起こしたくない問題が、歴史ある企業には少なからず存在するので悩ましい。特に下請関係は長い間かけて形成された慣行のようなものが多かろうから、尚更である。担当者は見て見ぬ振りをするか、本当に見えていない。
この「手数料請求」の慣行を止めて値引き分として相手に合意させようとすればそれはそれで下請法上の問題が生じるかもしれない。せっかく支払わせていたものを失いたくない、失えばその時の担当がいろいろいわれる。その引き継ぎが繰り返され、今に至った。そして考えることもしなくなった。そんなところだろうか。
今更止める訳にもいかない。問題になったらそれは事故に遭ったようなものと考えよう。そういう「エクスキューズ」が企業には存在しないか。それはまるで今もなお根強く残っているだろう地方での入札談合と同じようなものだ。
マツダは「08年にも、部品の製造を委託する58社に対し、支払うべき代金から計約7億7900万円を不当に減額したとして、下請法違反で勧告を受けていた」(上記記事)という。そこで宣言しただろう「コンプライアンスの徹底」は何だったのか。
ややこしそうな問題はできる限り自分の担当のときには触れたくない。それはどの組織にも見られるマインドである。「仕事を増やしたくない」「責任を取りたくない」、そういった「面倒」を避けたい心理が働き易いのだろう。コンプライアンスはそういったマイナスの心理との戦いであるともいえる。やはり重要なのはトップのコミットメントである。