東京オリ・パラは、結局「どんな形」で開催されるのでしょうか?

東京オリンピック・パラリンピック開催時の、海外からの一般観客の受け入れを見送ることが決まったようです。

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今後は国内の観客を入れて開催するのか。あるいは、無観客で開催するのかといった議論に進んでいくと思います。これは、プロ野球や大相撲などの国内スポーツと同じようなルールでの運営になのでしょう。

参加する競技選手は、競技会場と選手村だけに行動範囲を限定し、国内の感染拡大を防止するとしています。しかし、世界中の選手が集まれば、選手間の接触をゼロにすることはできません。世界のコロナウイルスがシャッフルされるリスクがあります。

感染を恐れる選手の中には、参加を断念する人も出てくるのではないでしょうか。また、日本でのオリ・パラに参加することに、自国から非難の声が上がるリスクもあります。参加を見送る国が出てくれば、世界のスポーツの祭典というお題目も色あせていきます。

最近の民間機関による各国の調査によれば、東京オリンピックの年内開催に「同意しない」という回答は、日本が56%と最も多く、イギリスが55%、ドイツが52%、アメリカは賛否とも33%という結果になっているそうです。アメリカ以外の先進5か国で反対が賛成を上回っています。

今後、再び新規感染者が拡大する「第4波」がやってくる可能性は高いと思います。東京オリ・パラの開催直前にタイミングが重なれば、国内外で開催に疑問を持つ声が高まることもあり得ます。

さらに、日本は他国に比べ、ワクチンの接種が遅れています。このままの状態で、感染者が増えているにも関わらず、外国人競技者や大会関係者が入国することになれば、内閣支持率は再び下落するリスクが出てきます。

それでも開催を強行すれば、間の抜けた何とも盛り上がらない「スポーツの祭典」に終わることになるでしょう。

開催地が東京に決まった時の熱狂から、今の状況を想像することが出来た人は誰もいないと思います。エンブレム盗作騒動から、前会長の女性蔑視発言問題、さらには今回の女性タレントの侮辱問題。コロナウイルスだけではなく、次々とトラブルが発生し「呪われた大会」とも言われています。

それぞれの立場の「大人の事情」があることは良く理解しています。どのような形で開催するかはわかりませんが、このまま東京オリ・パラを開催に向けて強引に進めていくことには、更に大きなリスクがあることだけは確かです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。