総務省接待問題に見る、日本政治の「緊張感のなさ」

田原総一朗です。

菅首相の長男が勤務する東北新社が、
総務省官僚に対して
39回も接待を行っていたことが、
大問題になっている。
これは明らかな国家公務員倫理規定違反だ。

さらに、2016年10月、
東北新社がBSチャンネル「ザ・シネマ4K」の事業認定を申請した際、
株式の外資比率が20.75%だったことがわかった。
衛星放送事業は総務省の認定が必要であり、
放送法によって
議決権のある株式の外資比率が20%未満であることが、
条件となっている。
しかし、東北新社は20%未満と申請し、
2017年1月に事業認定を受けていた。

東北新社側は、
これを「計算違いだった」と釈明。
2017年8月に判明した時点で
総務省の担当者にすぐ報告したと言っているが、
この官僚は国会で「記憶にない」と証言した。
いったいどちらが本当なのか。
いずれにしても認可は取り消されず、
17年10月、東北新社は
違法状態を解消するため、
「ザ・シネマ4K」を子会社に承継した。

東北新社による総務省接待問題から
外資比率問題が浮かび上がり、
問題化した今年3月、
ようやく「ザ・シネマ4K」の認可が
取り消された。

総務省問題はこれにとどまらなかった。
NTTによる接待問題も、
浮かびあがったのだ。
官僚だけでなく、
歴代総務大臣、
野田聖子氏、高市早苗氏、
そして現職の武田良太郎総務大臣も接待に応じていた。
野田氏は「接待という認識はない」として、
以前からの友人だったなどと釈明している。
高市氏もまた自分の代金は出しているなどと説明。
武田大臣も、
「1万円支払った」としているが、
やましいことがないなら
なぜこれまで隠していたのだろう。
武田大臣はこの事実を
3月18日になってやっと公表した。
それにしても、
NTTによる接待に応じないと
総務大臣が続けられない理由でもあるのか。

いったいなぜ日本の政治は、
こんなにも緊張感を失ったのか。
いくつかの要因があると思う。
「政治主導」という御旗のもと、
2014年に内閣人事局が設けられた。
人事を内閣に握られた官僚は、
おのずと政治家におもねる。
それができない官僚は、
次々と左遷される、
あるいは辞めていった。

また、かつての自民党政権時代には
党内に現政権に対抗する反主流があり、
事実上の党内「政権交代」があった。
しかし安倍一強から菅政権に続く現在、
政権にNOを言う政治家はまずいない。
これは明らかに
執行部に逆らえば当選できない、
小選挙区制の影響だ。

東大生の国家公務員志望者が
激減しているという。
度重なる不祥事を見て、
「官僚として国をよくする」という
夢を持てないのだろう。
これは深刻な事態である。
政治と官僚とのあり方を、
徹底的に考えねばならない時が来ている。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2021年3月25日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。