米3月ADP全国雇用者数は堅調、人員削減予定数は2019年平均以下に

3月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数をおさらいしていきます。

ニューヨーク市で呼吸器マスクを着用した地下鉄通勤者

米3月ADP全国雇用者数は前月比51.7万人増となり、市場予想の55万人増を下回った。2月は大寒波の到来やテキサス州の大停電を受け雇用増加ペースが鈍化したが、2020年9月以来、6ヵ月ぶりの力強い伸びを達成。3ヵ月連続で増加した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

チャート:ADP全国雇用者数、3ヵ月連続で増加

作成:My Big Apple NY

セクター別では、サービス部門が43.7万人増と前月の18.7万人増(修正値)を超え、3ヵ月連続で増加した。5ヵ月ぶりの高い伸びとなる。内訳は以下の通り。

・娯楽/宿泊→16.9万人増、3ヵ月連続で増加>前月は5.1万人増
・貿易/輸送→9.2万人増、3ヵ月連続で増加>前月は6.1万人増
・専門サービス→8.3万人増、11ヵ月連続で増加>前月は3.3万人増
・教育/健康→6.8万人増、11ヵ月連続で増加>前月は3.9万人増
・その他→2.2万人増、3ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増
・金融→0.9万人増、6ヵ月連続で増加>前月は0.2万人増
・情報→0.7万人減、5ヵ月連続で減少したなかで最も弱い<前月は0.3万人減

財部門(製造業、建設、鉱業)は8.0万人増と、過去5ヵ月間で3回目の増加となった。内訳は以下の通り。

・鉱業→0.1万人減、2020年7月以来の減少<前月は0.3万人増と3ヵ月ぶりに増加
・建設→3.2万人増>前月は0.6万人減と7ヵ月ぶりに減少
・製造業→4.9万人増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は0.7万人減

ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「3月は力強い改善を確認し、6ヵ月ぶりの高い伸びだった」と振り返った。また「サービス部門の雇用はここ数カ月の平均を大きく上回り、特に娯楽・宿泊はで目立ち、ワクチン普及と経済の正常化で最も改善余地がある」と指摘。今後も注視が必要でありつつ、数カ月先も大幅増が期待できるとの見解を寄せた。

▽米3月人員削減予定数、年初来はコロナ前の2019年以下まで改善

米3月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で86.2%減の3万603人と2ヵ月連続で減少した。20年3月は、コロナ禍で経済活動が停止した影響で削減予定数が急増していた。前月比では11.4%減となり、2ヵ月連続で減少。感染者数の減少やワクチン普及の加速に加え、追加経済政策を通じた現金給付で個人消費が急拡大する見通しのなか、企業は削減予定に慎重になりつつあるようだ。

年初来では、前年同期比58%減の14万4,686人だった。1~3月期としては、2018年以来、3年ぶりの低水準となる。

チャート:人員削減予定数、Q1では2018年以来の低水準、またコロナ前の2019年の月平均値である4万9,379人も下回り4万8,299人。

作成:My Big Apple NY

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「コロナ禍から1年を迎え、雇用回復段階に入り企業は人員削減を抑えるだけでなく、成長を見込み始めている」と、前月に続き明るい予想を示した。また「小売や娯楽、ヘルスケアなどパンデミックで雇用削減が目立った業種で、大規模な採用計画が発表されている」という。ただし「採用計画数も1~3月期に前年同期比66%減の31万6,233人と減少していた」指摘。経済活動が停止した2020年3月は「食料品、配送、小売業、倉庫で大幅な雇用増加がみられた」影響が大きく、同年で採用予定数が3月を超えたのは9月だけで、雇用回復は堅調といえよう

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。2月は1位が小売、2位がエネルギー、3位が保険、4位が輸送、5位が航空・防衛だった。

1位 通信 5,155人
2位 サービス 4,418人
3位 娯楽・宿泊 2,344人
4位 教育 2,342人
5位 食品 2,157人

年初来では、以下の通り。2月時点まででは1位が航空・防衛、2位が通信、3位が小売、4位が倉庫、5位娯楽・宿泊だった。

1位 航空・防衛 3万1,073人
2位 通信 2万4,157人
3位 小売 1万932人
4位 倉庫 9,866人
5位 娯楽・宿泊 9,811人

州別動向は、年初来で以下の通り。航空・防衛が最多だったことから、ボーイングが本社を置くワシントン州が1~2月に続き前年の圏外から1位へ急伸した。2位は以下も3月と変わらず。

1位 ワシントン州 3万5,907人
2位 テキサス州 2万4,300人
3位 カリフォルニア州 1万8,978人
4位 ミズーリ州 8,284人
5位 テネシー州 6,659人

リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通り。1~4位は2月と変わらず、しかし今回新型コロナウイルスが2月までの5位から6位へ転落、代わりに合併・買収(M&A)が入った。

1位 需要低下 3万9,108人
2位 市場動向 3万8,049人
3位 再編 2万287人
4位 閉鎖 1万7,817人
5位 M&A 8,715人

採用予定数は、前年同月比で88.1%減の9万7,767人だったが、2014年以降では3番目に大きな規模となる。前月比では33.2%減と、経済活動の再開や追加経済対策の成立という追い風が吹くなかで縮小。1~3月期では、前年同期比でも66.2%減の31万6,233人だった。

チャート:採用予定数の推移、単月でもQ1でも減少ながら2014年以降から見ると底堅い

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セクター別では、単月で以下の通り。2月は1位が小売、2位が政府、3位が娯楽・宿泊。4位が資本財、5位がヘルスケアだった。

1位 娯楽・宿泊 2万5,035人
2位 政府 2万1,348人
3位 ヘルスケア 8,144人
4位 倉庫 6,470人
5位 サービス 4,754人

年初来では、以下の通り。前月までの1位は小売、2位が政府、3位がヘルスケア、4位が娯楽・宿泊、5位が公益だった。

1位 小売 7万2,070人
2位 政府 5万7,042人
3位 娯楽・宿泊 4万1,492人
4位 ヘルスケア 2万8,389人
5位 公益 1万4,818人

人員削減予定数と採用予定数をみると、採用が人員削減を上回る推移が続く。

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――3月は、ADP全国雇用者数が予想以下とはいえ順調に伸びました。人員削減予定数も減少し何よりコロナ前の2019年の月平均を下回りました。採用予定数は20年3月に経済活動の停止で特需が膨らんだ頃を大きく下回ったとはいえ、2014年以降で3番目の高水準。労働市場の改善は明らかですが、問題はその持続性で、今後は追加経済対策とインフラ計画で拡大できるかが試されます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年4月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。