100万ボリバル紙幣も遂に登場
昨年のインフレ率3713%だった超ハイパーインフレの国ベネズエラで3月8日から新たに3種類の紙幣が市場に出された。
20万、50万、100万ボリバル・ソベラノ(Boívar Soberano)の3 札である。その価値はというと、米ドルに換算して最高額の100万ボリバルは米ドルにして僅か53セントの価値でしかない。
この新紙幣の造幣の為に昨年10月に米ファンドのベイン・キャピタルが資本参加しているイタリアのフェデリゴーニ社から71トンの造幣用の紙を輸入したことがアルゼンチン電子紙『Infobae』(2020年10月5日付)が明らかにしている。当初10万ボリバルの紙幣を発行する予定であったようであるが、インフレ率の上昇から更に紙幣の額面を増やした紙幣に変更したようだ。
これまでで最後に新しく紙幣を造幣したのは2019年のことで1万、2万、5万ボリバルの3種類を発行した。その時点だとドルに換算してそれぞれ1.62,3.25,8.14ドルであった。
その前の2018年8月に貨幣価値の下落を和らげる意味でデノミを実施して貨幣の単位を5桁切り下げた。それまで通貨をボリバル・フエルテ(Bolívar Fuerte)と呼んでいたのを前述したようにボリバル・ソベラノと呼び名を変えた。呼び名を変えたところで実質的にインフレの上昇を食い止めることはできないでいた。その結果が今回の100万ボリバル紙幣を発行せねばならなくなった要因だということである。
その物価上層を示すものとして、今年の最低給与40万ボリバルをベースに物の価格を比較してみよう。例えば首都のカラカスでの物価の上昇を示すものとして「カラカスの生活コスト」と題されたリストがある。
これに記載されている主な内容を以下にリストアップしよう(今年3月の物価)。
- 市内の豊かな地区で一日の食事のメニュー代 918,336 ボリバル
- ビックマックなどファーストフードのメニュー代 399,291
- 鶏肉500グラム 279,408
- ミルク1リットル 22,251
- サイズが大の卵1ダース 231,813
- リンゴ1キロ 104,555
- コカコーラ2リットル 90,878
- 一日二人分のパン 201,723
- 1リットルのガソリン 12,355
最低給与40万ボリバルをベースに以上のリストを一覧すると、ファーストフードでビックマックを食べるだけでひと月の給与は吹っ飛んでしまうのである。40万ボリバルではまともに食材は購入できないということでもある。多くの市民は物々交換などをして、必要なものを手に入れている。
唯一、相対的に安価なのはガソリンだけである。しかし、そのガソリンも不足していて米国の制裁から逃れるようにしてイランなどから輸入している。
支払いは金塊を充てている。飲料水は不足し、燃料も不足していることから木を伐採して薪にしている。それを軍部が率先して実行しているといのだ。
(次回に続く)