人口減、対応可能なのか?

出産数の減少による人口減の問題は日本だけではなく、世界で共通の問題となっています。アメリカ、ワシントン大学の調査によると1950年代を通じて生まれた子供は一年あたり4.5億人を超えていました。明白な減少が始まったのが60年代初期でそこから今日に至るまでほぼストレートで下がり続け現在は年2億人強の水準であります。つまり、この6-70年の間に年間出生者数は半減しています。

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理由はいくつもあると思いますが究極的には病気や戦争で亡くなる子供が減ったことで種の保存の法則による環境適応が働き、生まれる子供の数が基本的に減っていると考えるのがナチュラルだと思います。

もう一つは概念的には所得水準が上がると子供の数は減るというものです。これは世界銀行の調査で一人当たりGDPと特殊出生率を国ごとにプロットしていった図を見ると日本など先進国は右下、つまり所得は高いが子供の数は少ないグループとなりますが、アフリカ諸国などでは所得は少ないが子供は多いという相関図は明白であります。

では日本で時折聞かれる「所得が多くなれば子供が増える」という意識は間違いなのでしょうか?例えば東アジアの都市部の出生率は押しなべて異様に低く、台湾、中国東部都市部、韓国は言わずもがなであります。それ以外にもタイの少子化スピードは顕著ですが、タイの理由は(人口膨張を防ぐ)家族計画の効果が効きすぎたこと、女性の社会進出が招いたと解説されています。

また総人口数が少ないのであまり話題になりませんが、シンガポールも出生者数の少なさでは5本指に入る常連であります。同国も人口問題に何年も取り組んでいますが、逆の方向に向かっています。アジアで唯一の例外はフィリピンでここは東南アジアで突出した特殊出生率2.5以上を維持し、コロナ禍においては想定外の出生率増が「懸念」されているのです。

アメリカは先進国では比較的高い出生率を保っていますが、フィリピンを含め、何が違うのでしょうか。

私の見立てはフィリピンのキリスト教も含めた宗教観と共に、北米の「生活刺激度」の質が東アジアと違うのだと思います。北米で生活していると日々の生活に刺激は少ないものです。街には同じ店が立ち並び、スーパーに売っている商品は何年たっても同じ商品が同じ棚に並んでいます。日本のように新製品の嵐はなく、アイドルの追っかけも少なく、楽しいことがたくさんあるわけでもなく、基本の生活の基盤が家庭にあります。

ところが東アジアや一部の東南アジアの場合はあまりにも刺激ある生活が大きすぎて生活の基盤が家庭にはなく、あらゆるところに散らばっているのです。それは職場であり、友人関係であり、趣味の世界であり、SNSであります。かつて私のところの従業員で移民権を持つ若い香港人の女性が「香港に帰る」と言います。なぜ、と聞けば「こんな刺激のない街は嫌だ。私の友達も皆、帰ったし」と。

以前から私は女性の社会進出は出生率を更に下げることになると申し上げました。外していないと思いますが、そんなことが正しいと政府を含め言えるわけがありません。ただ、あえて但し書きをするなら女性の社会進出の結果、女性も男性も家族に向き合うようになるなら、それは正の効果があると申し添えておきます。ですが、日本の文化や社会の動静からはそんなことは逆立ちしても起きないのです。

政府は「こども庁」創設の準備を進めます。また面倒な切り口を作るものです。政府がどれだけ対応してもそれは空振りです。私が思う唯一の解は「シンプルライフ」だと思います。テレビの「へぇ」の連続で目がチカチカするような画像編集を止めてもっと落ちつかせること、スマホゲームなどでの刺激度を抑えること、世界の名作などが読みたくなるような(=つまり暇すぎてしょうがなくてやむを得ず、手に取るという意味です)環境を作り、家族単位でもっと行動できるようにすることかと思います。もちろん、こんなことできるわけがないのですが、少子化対策だけを考えればこれが真の答えだと思います。

ところで日経が「出生数が世界で急減 コロナ禍、日米欧1~2割減 将来不安、成長の重荷に」と報じています。コロナで人と人の接点が減ったことと感染症が子作りにメンタルなバリアができたことは否定できないと思います。国立社会保障人口問題研究所は20年の出生者数の予想が84.8万人、21年が80万人割れを見込んでいますが、私は20年は82万人程度、21年度は77万人台に加速するとだいぶ前に予想させて頂きました。(大体この手の数字は時として政治的補正がかかることもありますので鵜呑みにできないのです。)

人口が減るのですから規模の経済を追求するのも難しくなります。ビジネスをする観点からはどうシフトしていくべきでしょうか?まず、特徴がないビジネスは淘汰されます。優勝劣敗はより鮮明になります。地方の疲弊も更に進みます。

かつて「狭い日本、そんなに急いでどこに行く」と言われましたが今後は広々とした日本になります。となれば都市計画そのものを作り替えるしかないと思います。Re-Construct Japanです。2050年に向けてコンパクトで土地の有効利用と一定の人口密度を維持しながら経済機能をハイスペックなものに切り替えていくということかと思います。

ユダヤ人は世界で1300万人強ですが、世界の経済や政治を牛耳ります。とすれば日本の人口が多少減っても日本が消滅するようなことはなく、むしろ、国内に小さくとどまっているのではなく、外に出て日本人ネットワークを作り、影響力を作り上げることがあるべき姿かと思います。ものは考え様です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月19日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。