GW等大型連休が「楽しくない」のは今年だけではない

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

小池都知事が「このままいくと全然楽しくないゴールデンウィークになる」と発言したことが、大きな話題になっている。SNS上では、「感染拡大を抑えられない政府の責任だろ」「自分は創意工夫してお家で楽しむ」など様々な反応が見られた。

Yusuke Ide/iStock

そもそも、2021年に限らず個人的にゴールデンウィークなどの大型連休は「楽しくない」と感じていた。そして「祝日を楽しくする」には、大型連休ではなく、各々好きな時に休めるセレクト休暇の導入が求められているのではないだろうか。

大型連休は本当に楽しいのか?

筆者は「大型連休は楽しくない」と会社員時代から感じていた。そして、経営者になった今は以前よりますますその想いは強くなる一方である。お断りしておくが、家に居場所がないほどのワーカホリックであるために「連休がいやだ」と言っているのではない。そうではなく、「みんなが一斉に何日も休む(サービス業などは除く)」というあり方が問題だと感じるのだ。

そのように感じる理由は、次のようなものだ。

・観光地はメチャ混み&高い
・主婦は平日より負担増
・大型連休前後の仕事が大変
・経営者やフリーランスは仕事が進まない

下記に具体的に列挙していく。

一斉に休むことで連休の意義が薄まる

単なる土日ではなく、3日間、4日間といった「連休」である最大の意義とは「まとまった休日にしかできないことをする」という点にあるのではないだろうか。人によってその過ごし方は千差万別だが、たとえば「国内外への旅行」や、「実家への帰省」、または「溜まっている読書や映画などを消化する」や、「集中的に勉強に励む」ということがあげられるだろう。消費を促進することで、日本全体で見た場合の経済効果も期待できるだろう。

しかしながら、この連休であることの意義が「みんなで一斉に休む」ことによって無意味になっているケースが見られる。ファイナンスの理論が機能することで、行楽地の宿泊料や交通費も必然的に高騰する。一部の人は価格に影響されずに出かけていただろうが、多くの人にとってこの価格高騰は痛手に感じるはずだ。また、価格高騰が起きても尚、観光地は混雑するものだ。これが行楽地でも待ち時間を発生させる。これにより、「本音では出かけたいが、コストと混雑の問題で出かけられない」という人もいるだろう。

実際、過去に筆者は痛い経験をした。シルバーウィークの連休に遊園地に出かけたが、その時はお目当てのアトラクションの利用待ち時間が5時間を超えた。結局、その時は5時間待ち続け、一日使って2つのみアトラクションを利用したに留まった。さらに問題は続いた。バスで帰京を試みるも道路混雑で到着が大幅に遅延、これにより終電に間に合わずにネットカフェで宿泊した思い出がある。これにこりて、二度と大型連休に遊びに行くことはしなくなった。

また、対応に苦慮するのは、サービス業に従事するスタッフの方がより切実だろう。次々とひっきりなしにお客さんがやってくる上に、価格も平時より高く、さらに混雑でイライラしている人も多いからだ。

「みんな一斉に大型連休に休む」というスタイルは、価値観もエンタメもこれだけ多様化した現代社会に本当にうまく機能していると言えるのだろうか?

大変なのは経営者・フリーランスや主婦

そして大型連休に苦労しているのは、経営者やフリーランス、それに主婦の人かもしれない。

経営者やフリーランスにとって、大型連休は仕事が進め辛い事情がある。取引先は休みになり、子持ちの従業員を抱えるサービス業の社長は、現場の人手不足は必至である。また、シンプルに「連休中は仕事がなくなる」ということで、収入減になることで生活に影響する経済的問題に直面する人もいるはずだ。

そして大変なのは主婦の人たちも同様である。筆者と妻はお互いに別々のビジネスを持つ経営者をしている。子供の世話や家事は筆者がメインで担当しているので、連休中の主婦業の大変さはよく分かるつもりだ。子供の幼稚園や学校は軒並み休みとなる。子供が2人いれば、子供が起きている間は仕事は何も進められない。さらに子供を遊ばせる遊び場はどこも混雑しており、昨今の感染リスクで出かけることもできない。「家はつまらない!お出かけしたい」などと言われれば、進退窮まる心境になる。

ソリューションは「セレクト休暇」

筆者が考えるソリューションとしては、「セレクト休暇制度」の推進である。これを日本に400万社以上ある企業にすべてアプライする実現可能性については、別の議論が必要になるだろう。だが、導入する価値は大いにあるはずだ。

セレクト休暇とは、文字通り「休日を自分で選ぶ(セレクト)」というものだ。これは筆者がかつて、勤務していた外資系企業で実践していたユニークな制度である。一般的な国民の休日に応じた数を社員へ付与し、祝日の取得タイミングは個々人で好きに取得できるというものだ。実際に筆者がセレクト休暇を使っていた時期は、大変有効だと感じた。観光地もオフシーズンに出かければ安く、混雑もしていない。接客スタッフも空いている時期に利用すれば、対応に気持ちの余裕があるのを感じた。現行の大型連休より「楽しい連休」になる可能性は高いのではないだろうか。

時代は変わってきている。ゴールデンウィークやシルバーウィークなど、「日本独自のガラパゴス連休」を再検討し、人々の多様性に応じて祝日への考え方も変える時が来ているのではないだろうか。

■最新刊絶賛発売中!

■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

YouTube動画で英語学習ノウハウを配信中!

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。