『コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査』というプレスリリースが、株式会社ワーク・ライフバランス社より4月22日に出された。中央省庁のブラックな実態が浮き彫りになっている調査結果であり、調査自体第三者である民間が行っていると言う点で価値がある内容である。
実態調査の概略
その中で残業時間に対する実態が報告されているが、少々耳を疑う内容である。民間企業は、コンプライアンス経営を重視し、法令遵守の精神で制度改革や組織風土改革、インフラ整備などを進め『働き方改革』を進めている。この問題は投資家視点からも重要視される、現在の企業経営上必要不可欠な課題なのだ。労働基準監督署より査察を受け、是正勧告を受けてしまうと経営が行き詰まり兼ねないのだから。しかし、中央省庁は20年前と何ら変わっていない実態が明らかにされたのだ。
そして、その原因も報告の中では明確になっている。諸悪の根源は、次の2点である。
- 国会議員からの質問通告時間が遅い
- デジタル化に後ろ向きな議員の存在
2番目のデジタル化の問題は、『デジタル実践議員宣言』を86人の国会議員が実施し、デジタルツールの積極的活用を宣言しており、河野大臣の押印文化のデジタル化を評価する等ポジティブな意見も多く出ており、今後、時間はかかるだろうが、改善方向にある事も確認できるので、期待を込めても良いだろう。
敢えて政党別の実態を語ると、デジタル化対応をしている議員の所属政党は、
3位 国民民主党(10)
であり、逆にデジタル化に対応していない議員の所属政党は、
3位 共産党(14)
自由民主党は、両方に顔を出し、積極的な議員と後ろ向き(恐らく重鎮?)な議員が拮抗しているのは、変化していく過程に感じる。一方で、立憲民主党、共産党の所謂左派政党は、デジタル化に後ろ向きで、第三極になる可能性のある、日本維新の会、国民民主党は積極的な改革志向を持っている事がうかがえる。
質問通告に関するルール逸脱問題
問題は、1番目の質問通告に関する件だ。この問題は、相当以前から問題視されていた。国会戦術の一手法として野党の常套戦術である事は有名だ。要は、質問に対する答弁準備の時間を与えず、政府、与党の失策を引き出す為だ。しかし、これでは建設的な議論は生まれず単なる策略に過ぎず、国益に適わない事は明白で、その影響で官庁が不夜城化してしまう。筆者自身も一時期、政府外郭団体からの企画受託経験もあり、この対応に追われたのだが、その際は、夜寝る時間は無い状態だった。そして、その殆どが無駄な待機、必要のない準備であった。その状態が、未だ何ら改善されず、悪質化している実態も示されているのだ。
質問通告2日前のルールを守っていないことが多い議員の所属政党は
4位 国民民主党(3)
逆にルールを守っていることが多い議員の所属政党は
4位 自由民主党(2)
これを見て明らかなのが、立憲民主党、共産党がダントツでルールを守らないという事である。この2党に関しては、この事に関して国民に向けて説明責任を果たすべきであろう。最近テレビなどで、何でも反対野党ではなく、建設的な提案野党として活動しているとアピールしている場面を多く見受けるが、国民目線では、未だに何でも反対勢力としか見えていないのが実態であり、こういう説明責任を果たす事、言い訳をせずに真摯に反省し、改善策を提示し実行する事が、国民の信託を得られる唯一の手段ではないのか。選挙戦術で候補者調整も重要だろうが、国政を担う為には、避けては通れない重大事項として対策含めた説明責任の実行を期待したい。
一方で目を引くのが、日本維新の会と国民民主党ではないだろうか。特に国民民主党は、立憲民主党と袂を分けた良い影響が現れている様にも感じる。デジタル化も含めて、前向きで合理的な対応と評価しても良く、この2党は次の選挙の台風の目と化す可能性すら感じる。国民民主党は、変に野党連合に名を連ねるよりも、第3極を担う重要なポジション、いやそれ以上に化ける期待を持てるかもしれない。期待に応えてもらいたい。
次期政局は
国家の一大事案として緊急事態が3度も宣言された。海外からの評価では、日本の感染症対策は、過度な人権制限もなく、感染の被害を最小限に抑えているというのが、正当な評価である。ワクチン接種が遅いのは、リスク対比で遅くて当然なのだ。しかし、それでもここに来て、例え政府の直接責任は無く、国民世論の圧力に屈した形だとしても、結果として3度も緊急事態宣言を発出した事実は大きい。普通の感覚なら、一旦下野するのが自然だろう。
しかしながら、現政権が下野した場合、第一野党である立憲民主党が前述の様な体たらくでは、国政を委ねられない。前述の問題等、しっかりと説明責任を果たし、信頼を勝ち取れば別だが、現在の自己正当化に終始する、これまでの延長では、とても政権は委ねられない。
しかし、日本維新の会と国民民主党が第3極として、キャスティングボードを握った現与党との連立政権であれば、一つの選択肢にはなり得るかもしれない。この原稿を書きながら、調べていたら、『官僚・国家公務員たちから怒りの糾弾!民間大規模調査によって、立憲民主党と共産党の恐るべき実態が明らかに…』という動画を発見した。正に、同意見、同じ視点で語ってくれている。
逆に言うと、自由民主党も前述の調査でポジティブとネガティブの双方に顔を出すのではなく、ポジティブにシフトしたら、世論に迎合するだけではない、新たなポジションを確立できるだろう。
どちらにしても、健全な民主主義の為には、政権を委ねる複数の選択肢が必要である。次回衆議院選挙までに各党、何を示せるか、注目である。