声を上げ始めた現場の医師たち。
昨年末にはひたすら自粛を求め、初めて国民の理解を得られないという体験をした医師たちでしたが、その論調が次第に変化しつつあるかもしれません。
これまで医療関係者からは決められた制度の枠組み中で目いっぱいの現場の努力を行い、それが維持できない悲鳴が多く聞こえてきていました。それが自粛に協力しない国民への感情として表出していたようにも見えていました。
一方ここ最近で見られるのは制度自体の不作為について指摘するものです。医師自身から医療制度に対して現場目線の問題提起が上がるのは良いことだと感じます。
上記の指摘の通り限られたコロナ病床においては、ほんの数日の入院延長の積み重ねが医療リソースへの大きな圧迫につながっているのは事実です。
その背景には本人自身が持つ退院への不安だけでなく、受け入れる家族の不安もあります。特に重症化しやすい高齢者の場合、同居する高齢者およびハイリスク者が「1日でも長く病院で療養していてほしい」と感じるのは当然です。
さらには高齢者が入院した場合、この機会に在宅介護から施設介護へ切り替えようとする心づもりや、独居老人が退院後に抱く不安などという、介護の担い手問題との関係もありうると考えています。
一方で海外からの帰国者に関しては一定期間の施設での待機が科せられるなどの対応がされています。おそらくこれらの感染拡大防止策と、病院入院期間が混同されているのだと思います。
本来、コロナ病床はコロナ病床としてだけ機能し、退院可能と判断されたら速やかに退去するという形で回転率を上げていかなければ、いくら病床数を増やしても追いつかず、感染縮小期には病院経営の足を引っ張ります。
とはいえ決まり通りに「入院の延長はできない」と断れば病院の評判を落とし、現場の医師たちに余計な精神的負担を与えます。
そうであれば病院と宿泊療養施設との制度上の整備が必要です。
退院可能と判断された患者は、強制的にコロナ病床から退去し、自宅待機できる者は自宅に、そうでない者は入院延長の代替案として宿泊療養施設への移動を強く求められるよう制度化が必要だと考えられます。
同時に宿泊療養施設から、必要に応じてコロナ病床へスムーズに移動できる、パラレルな仕組みが必要だと思います。
病院・行政ともにリソースが限られる中で密な連携を求めても、それを担える人員が不足しています。だからこそ、せめて制度的に明確化することでのサポートが必要だと考えています。これは医療へのアクセスを減らすものでも、サービスの低下でもありません。
平時・緊急時問わず医療リソースの適正利用に対し、多くの方が理解し協力していただければ幸いです。