菅義偉首相は4月30日、東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に依頼している大会期間中の看護師500人派遣について、「現在休まれている方もたくさんいると聞いている。そうしたことは可能だ」と述べた。
看護師派遣については、新型コロナ感染拡大への対応を優先すべきとの反対論もあるが、そうした声について、首相は「そうした声があることは承知している。支障がないように全力を尽くしていきたい」と語り、医療提供体制に影響が出ないよう努める考えを示したという。
医療提供体制に支障が出ないようにしたい、または、医療体制逼迫の現状を何としても改善したい。何度も聞いた言葉である。しかし、改善できなかったから、緊急事態宣言をまたもや発令したのではなかったか?
それにしても心配なのは、看護師派遣は、ワクチン接種の人員不足を招くのではないかということである。休職中の看護師が上手く集まってくれるとも限らない。本来ならば、休職中の看護師にもワクチン接種を手伝ってもらったほうが良いのではなかろうか。
ワクチン普及の遅れは、数十兆円になるとの説もある。それは、東京五輪が中止となった場合の損失(一説には約4兆円)をはるかに上回るものだ。
東京五輪の開催時期と国民へのワクチン接種の多忙期とが重なる可能性も指摘されている。東京五輪の開催が、医療提供体制とワクチン接種を圧迫するというのだ。
また世界中から五輪選手が集まってくるという事は、コロナの変異種が開催後に蔓延してしまう可能性もある。「チェック、検査をしっかりやりますよ」と言われても、これまでの政府の対応を見ると「本当に大丈夫か?」との疑念を持たざるを得ない。
このようなダブルパンチいやトリプルパンチを受けても、なぜ菅政権は五輪を開催したいのか?五輪を無事に開催し、日本人をお祭り気分にさせて、政権の支持率を少しでも上昇させ、衆院選に良い影響を与えたいという一つの目算があるのではないか。
しかし、「五輪開催の代償が余りにも大きいものになってしまった」とならないようにしてもらいたい。五輪を開催した事によって、場合によっては、開催後に、国内外の人がコロナで亡くなる可能性もゼロではないだろう。
最悪の場合、世界中から、五輪開催した事を日本が責められる立場になるかもしれない。海外の五輪選手が日本でコロナに感染し、それを自国に持ち帰ってしまう。そして、海外の人が亡くなっていく。最悪の想定だが、今はそのような事が起きない事を願うのみである。