憲法記念日を前に選挙のデジタル化について考えた

衆参両院の補欠選挙・再選挙のほか、全国各地で市町村長選挙や議員選挙が実施された。選挙報道を見ているうちに、選挙公報の在り方に疑問を感じた。

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選挙公報は、候補者の氏名、経歴、政見等を有権者に伝える文書であり、本来は選挙管理委員会が直接配布するものだが(公職選挙法第170条)、代替手段として新聞折込による配布が広く行われてきた。

しかし、新聞は消滅に向かっている。日本新聞協会の発表によると、一般紙とスポーツ紙を合わせた1世帯当たり部数は、2000年には1.12と1を超えていたが、2020年には0.61と、ほとんど半減した。

選管は代替手段を求め、たとえば東京都世田谷区では選挙公報の各戸配布業務について公募型プロポーザルが実施されている。新潟県五泉市では、シルバー人材センターが配布を実施したことが事後に公表されている。

そんな中、福岡県那珂川市の市議会議員選挙では選挙公報が一部の世帯に配布されなかったという理由で、落選した立憲民主党新人が選挙の無効などを求める異議申出書を選管に提出し、その後、申出は棄却された。配布を受託していた西日本新聞グループ会社の管理不十分が配布されなかった原因だそうだ。

選挙公報は各候補者が作成した原稿をそのまま写真製版したもので、手書きの原稿があったり、自己満足的なイラストが載っていたりで読みにくい。視覚障害者は情報が入手できない。

なぜ、選挙公報をデジタル化しないのだろうか。

各候補は自分のサイトに公約を掲載し、選管は候補者サイト一覧を提供すればよい。サイト一覧につながるQRコードをコンビニ店頭や鉄道駅・バス停などに掲示すれば、多くの有権者に伝わる。公約をテキストで掲載すれば、視覚障害者も読み上げ機能を使って内容を知ることができる。

携帯電話等の契約数は2020年9月時点で1億8,917万と人口を越えている。総務省の2019年版「通信利用動向調査」によれば、60歳代のスマートフォン普及率は64.7%と、新聞の世帯普及率よりも高い。新聞折込の代替案として可能性は高い。普及率が今後いっそう伸びていくことも、ほとんど自明である。

デジタル選挙公報では届かないかもしれない高齢者だけの世帯には、当面サイトを印刷したものを配布する。市町村は高齢者世帯を把握しているから、その情報を使えばよい。

投票所での三密を避けるには一部の政党が反対しているネット投票の導入がベストだが、その前に、まずは第一歩として選挙公報のデジタル化から始めてはどうか。