飲食店で若者が騒ぐと高齢者施設に伝搬するを論破する

いままでわたしは何度も、飲食店への広い範囲での厳しい規制はもとより、薄くて浅い移動規制は経済ダメージの割に効果が殆どないと説明してきました。特に後者の移動規制にはなんらエビデンスがありません。

【決定版】きちんと精査すると人の動きと感染には全く相関関係は無かった。まだ緊急事態宣言で消耗してるの?

昨年末には人の動きはかなり制限されたのに家庭内感染が爆発して東京は医療崩壊したわけです。単純な人の動きと感染には関係はないといってもいいと思います。

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1 若者から高齢者にうつしている可能性は低い

「令和元年国民生活基礎調査」によると3世代世帯の割合は、大阪府が2.5%(ワースト4位)に対し、東京都は1.8%(同1位)。そもそも若者は高齢者と同居していない。また、高齢者施設で働く人の年齢は急速に高齢化しており、

介護職の深刻な高齢化が調査で判明!20代の職員はわずか1%、50代以上が73%を占めるという結果に


厚労省のデータでは訪問介護員の4割が60歳以上で、施設介護はもう少し若いものの20代は15%しかおらず、40代が中心です。つまり若者と高齢者の接点が日本では切れているわけです。

2 飲食店でのクラスターは決して多くない

これは先週の東京ですが圧倒的に家庭内感染です。

こういうと「家庭内感染は抑えようがないからなんともできない」とほざく医療従事者もいますが、それりはあんたに実務能力がないから考えつかないだけで、やろうと思えばいくらでもできます。たとえばガラガラのビジネスホテルを自治体が借り上げてリスクの高いお父さんたちはそこに泊まれるようにする。蔓延期にハイリスク群を分離すれば家庭内感染はかなり抑えられるはずだし、たいしたコストでもないし、観光業は非常に助かる。誰も思いつかないしやろうとしないだけの話だ。で、ここまでは前書きです。

飲食店を締めると高齢者施設でクラスターがでないという理屈はこれ

「若者が出歩かないように飲食店を徹底的に締めあげると高齢者施設でクラスターがでなくなって医療崩壊しなくなるはず」というのは、尾身先生もはっきり「エビデンスがない」と発言しておられるが、なんの疑問も無くこれを唱えている医療従事者やコロナ脳や首長が多くてウンザリする。

落語に、「風が吹くと桶屋が儲かる」というのがありまして

突風が吹く

砂が舞い上がる

失明する人が増える

三味線を弾く人が増える・・・昔は目が見えない人がひいて商売にした

三味線の革を張るために猫を狩る・・・・・三味線の革は猫だったので

猫が減る

ネズミが増える

ネズミが桶をかじって穴を開ける

バカみたいな遠い因果関係で桶屋に投資するというのを馬鹿にしていたわけです。
しかし、飲食店が繁盛すると高齢者が死ぬという構図は

若者が飲食店で騒ぐ

若者同士で感染する

家に持って帰って親にうつす・・・・・・若者から親より逆のケースのほうがよほど多いのに?

その親がたまたま高齢者施設で働いている

高齢者施設にもっていってクラスターを起こす

という構造なのだそうです。www

いくらなんでも「若者が親と同居していてしかも親が介護職の家庭にのみ適合」というレアケースのために全飲食店に酒を出させず8時までの営業とするというのは「選択と集中」という効率化に完全に反している。で、維新の青山議員から国会で、尾身さんと厚労省に「若者が高齢者にうつしているという証拠はどれか」と確認したところ、回答してきたのが以下のデータでした。

この資料の6ページ目以降です。

ええっと・・・・ここから分かることは「若者から高齢者にうつしている」ではなくて、

感染拡大は徐々に広がっていく

ということだけじゃないんですか。そんなのごく当たり前でいきなり全部の場所でドカンと火が付くわけないじゃん。

この理屈なら、感染症対策には夜の街と飲食店は永遠に閉めていないとダメと言うことになる。少しでも流行の兆しが見えたらすぐに閉める。これじゃ日本の飲食業は消滅しますわな。ww

つまり医療の専門家によるこの方式では

高齢者施設のために飲食店は全部死んでよし

ということになり、コロナで寝たきり老人が死なないために現役はいくら死んでも良いというコロナに全振りの施策になったわけです。高齢者施設に飛び火させないための施策を全く打ち出さず、こんなのを出して飲食店を潰す医療専門家もアレだし、そのまま聞き入れる首長もアレ過ぎます。交通事故を無くすには車を無くせと同様の超弩級愚策です。

だいたいこれは一番肝心な部分、つまり「若者からいろいろ経由して高齢者にうつしている」という証明には全くなっていない。

若者から高齢者にうつしているのか

東京にはデータがないので大阪から持ってきます。
仮に上の論法で、「若者から高齢者にうつしている」のではあれば、まず若者の感染が増え、そのあとで高齢者が増えないといけない。上の厚労省の図なら1~2ヶ月経過して飛び火するはずなのであるが実際は

第4波は完全に同期している

つまり、若者も高齢者も中高年も同時に増えている。世代間の差は無く、これはつまりカラオケや飲食店に出歩いて感染する人たちはそれぞれの年代別で同期している事を示す。同時に感染が広がっているわけですよ。

第3波ではもっと面白いデータ。


縦の赤い線が60歳以上の感染ピークであるが、なんと

どの世代のピークよりも高齢者のピークが先に来る

ということがわかる。20代も30代も40代も、ピークは60代よりも遅れる。これはつまり「先に高齢者が感染してそれから下の世代にうつしている」という仮説がなり立つではないか。考えて見れば高齢者ほどウイルスを出すのはファクト!!!


訪問介護の職員の4割が60歳以上です。

高齢者同士がまずカラオケや酒を伴う飲食で感染し合い、同居の妻や40~50代の子供にうつす。また、友人の同年代の介護施設の職員にうつすと考えた方が理屈に合う。そうした経過を経て若者に感染していくと考えたほうがこのグラフを完全に説明できる。

つまりこのグラフで導き出される選択と集中の施策は、フロリダと同じ選択と集中、つまり

高齢者の行動制限以外にない

という、結論になる。散歩もするな、買い物にも行くなではない。「カラオケや飲酒を伴う飲食店への出入りは70歳以下(65歳でも別にいいが)は感染拡大時期には遠慮して貰う」だけだ。飲食店は未成年っぽいのがくれば当然身分証明の程度を求める。同様に高齢者が来店した場合、身分証明書の提示を求めれば良いだけだ。もっと軽くするなら、酒やカラオケの提供を禁じるだけでも良い。実際、先日までの時間制限のときは駅前の飲み屋が昼から騒いでいる高齢者が多くいた。暇だから昼から飲んでいる人たちが感染を拡大していたとも考えられるのである。

こうした分析をして、効率のよい規制をまったくせず、全体を規制して全部を殺すようなバカな施策は、実務能力のない学者と、選挙のブロだが実務能力のない政治家の素人コンビが考え出した愚策である。わたしはなにもしないでいいとは言っていない。医療崩壊をさせないためにもっとも経済的にダメージを与えず、高齢者に感染を広げない方法を考えるだけの知見が彼らにはないだけの話です。

「高齢者の交友関係は高齢者」という基本原則から感染の拡大が始まる時期(蔓延してからでは遅い)から規制を掛ける。逆に若者同士ならほとんど重症化もしないのだから(東京の20代の重症者はたった1人です)医療崩壊にはつながりにくい。こうした効率のよい規制をまったく出してこない専門家には本当に呆れてしまいます。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2021年5月5日の記事より転載させていただきました。