以前、2021年の3月に世界の気温が劇的に低下したことを書いたが、4月は更に低下した。
データは前回同様、人工衛星からの観測。報告したのは、アラバマ大学ハンツビル校(UAH)のグループ。元NASAで、人工衛星による気温観測の権威であるロイ・スペンサーが紹介記事を書いている。
図の縦軸は測定した気温である。1991年から2020年までの平均をゼロとしてそこからの差で示してある。青丸が毎月の観測値、赤い線は前後13カ月の移動平均である。気温測定の対象は地球全体の地上から高度9000m付近までの大気(これは対流圏下部と呼ばれる)。
地上の観測所は都市化などの影響を受けやすいが、衛星による観測はそのような誤差が混入しないという利点がある。また、地上付近だけではなく、大気圏全体を測定した方が、地球温暖化の観測としてはより適切になる。
さて図を見ると、2021年4月の気温は-0.05度だった。つまり地球の気温は1991年から2020年までの平均を下回った! ということだ。
4月のこの気温は2021年3月の気温である-0.01度からの微減だった。
この大幅な気温の低下は、進行中の「ラニーニャ現象」の影響によると見られている。2016年以来これまで「エルニーニョ現象」で高い気温が続いていたのが、一気に反転した。ちなみにエルニーニョ・ラニーニャとは、南米沖の海面温度が数年程度の間隔で変動する、というものだ。エルニーニョだと地球は暑くなり、ラニーニャだと寒くなることが知られている。
今後、この傾向が定着して、2000年代に一貫してそうだったように、地球全体の気温は低いまま推移するのか。それとも上昇に転じるのか。なおも予断できない。