入国規制強化を唱えつつ五輪開催を主張する矛盾

東京五輪を開催するべきか否か。保守派・リベラル派問わず、ネット上でも議論が続いている。概ね保守派は五輪開催、リベラル派は五輪中止を主張しているように思う。本稿では、いわゆる保守派の五輪開催論について考察を加えてみたい。

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作家・ジャーナリストの門田隆将氏は「五輪開催を勝ち取った日本が欧米の何十分の一の感染で自ら返上なら世界の信頼喪失」として五輪開催を主張する一方で、「ザル入国で蔓延招いた菅首相、ワクチン接種で手腕を発揮できない河野太郎氏」「海外ウイルス流入に無頓着な菅−加藤−田村トリオに変異種封じなどできる筈がなかった」と入国規制を強化しない日本政府に対して激しい憤りを隠さない。

 

また、ジャーナリストの有本香氏も、海外からの水際対策強化について政府の対応を非難しているが、一方では五輪開催を希望されている。

作家の竹田恒泰氏も「入国規制緩和を見直さないといけない」としつつも、5月8日から「五輪開催署名活動」をスタートされた。

3人に共通していることは、入国規制強化を求めつつ、数万人が入国(一説には9万人)する五輪開催に賛成していることだ。

3人がなぜ海外からの入国規制強化を求めているのか? それは、脆弱な入国規制ではコロナウイルスが国内に持ち込まれる可能性が高いからだろう。ウイルスが持ち込まれ、感染が拡大し、場合によっては人が亡くなる。そればかりか、緊急事態宣言が発令され、国民が多大な自粛を強いられ、経済も疲弊する。こうしたことが連鎖反応のように起こるから、入国規制強化を主張されているのではないか。私はその主張に大いに賛同するものである。

しかし、数万人が海外から入国する五輪開催は、ウイルスを国内に拡大させる可能性が高いという意味で危険だと私は感じている。五輪の時だけ、ウイルスが流入しないということがあるだろうか?

これまで杜撰だった政府の新型コロナ対策が急にしっかりしたものになるとは思われないし、最悪の場合、国内に変異株が蔓延するばかりか、海外の五輪関係者が帰国後、自国にウイルスを持って帰る可能性もゼロではあるまい。

そうなると、日本人や日本政府が恨まれるばかりか、訴訟の対象になるかもしれない。よって私は、現時点で五輪を開催することは、国益にも世界の利益にもならないと思うのだ。

以上の私の考えを「科学的根拠がない」「妄想だ」「マイナスのことばかり言うな」と言う入国規制強化に賛成する開催派の人もいるかもしれない。しかしそうであるならば、少なくともその人は、入国規制強化の主張を取り下げてから反論するべきだろう。入国規制強化を唱えつつ、五輪で人が大量に入国することを良しとするのは矛盾ではないかと思うのだ。規制強化には賛同できるものの、その点だけは違和感を覚えるのである。危機管理の基本は、最悪の事態を想定することであろう。