共和党知事の20州、失業保険給付上乗せを廃止する理由

バイデン大統領は4月28日の施政演説でフランクリン・ルーズベルト大統領に自身を重ねつつ、追加経済対策をめぐり 「米国史上最も影響力のある救済政策」と表現しました。その経済対策ですが、わずか2ヵ月で綻びが見え始めています。

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連邦政府が州政府支給の失業保険に、9月6日まで300ドル上乗せする案が盛り込まれた案につき、共和党は復職意欲を低下させているとし批判を展開。バイデン氏は、企業が賃上げすれば潜在労働力が市場に戻ってくるとの見方を寄せましたが、共和党が知事を務める州政府は失業保険給付上乗せ撤廃に乗り出し、5月17日時点でテキサス州やアラバマ州など南部を中心に、その数は全米で少なくとも20州に及びます。

画像:全米で失業保険給付撤廃に動いた20州(作成:My Big Apple NY)

チャート:州別の廃止スケジュール(作成:My Big Apple NY)

米4月雇用統計をみると、労働市場の改善は歩みの鈍さが見て取れます。労働参加率は61.7%と前月から0.2ポイント改善したものの、失業保険の加算(当時は600ドル)が期限切れを迎えた20年8月の61.8%に届いていません。そもそも、2020年2月の63.4%を大きくかけ離れたままなんですよね。

チャート:労働参加率とコロナ禍で職探しをしていない労働者(作成:My Big Apple NY)

逆に、平均時給は労働参加率と比べ改善が著しい。20年4月分はパンデミック下で経済活動の停止を受け低賃金職が急減し、高賃金職が押し上げ前年比7.8%上昇の30.07ドルだった背景から、今年分は下落が見込まれていました。しかし、蓋を開けてみると0.3%上昇。4月公表分を始め地区連銀報告(ベージュブック)で指摘され続けるように、失業保険の特例措置がエントリー職や低賃金職、派遣を求める企業の障害となっており、バイデン氏に推奨されるまでもなく、既に賃上げで対応していると捉えられます。実際、4月の平均時給は生産労働者・非管理職の前月比0.8%上昇に対し、コロナ禍で対面サービスを提供し、且つ低賃金の職である娯楽・宿泊は前月比2.7%上昇、小売も同2.1%上振れしていましたよね

低賃金職で賃上げ加速は、失業保険の支給額上乗せがこうした業種の平均時給より魅力的であるためです。州毎の失業保険支給額は週当たり平均387ドルで、これに連邦政府の支給額300ドルが上乗せされるため、合計687ドルとなります。これを時給換算すると17.17ドルですから、少なくとも外食サービスが含まれる娯楽・宿泊の4月時点の平均時給15.68ドルを上回るほか、小売の18.39ドルとそれほど変わらないのですよね。

ちなみに、共和党の州知事で撤廃に動いていますが、それらの州は最低賃金が低い事情が挙げられます。例えばジョージア州は5.15ドル(ただし、法律で連邦政府の最低賃金を採用する必要あり)に過ぎませんし、アラバマ州など最低賃金を設定していない州は連邦政府が定める額を適用するため、7.25ドルとなります。

平均時給が人間的な生活を営む上で十分か否かという問題を抱えつつ、企業にとっては賃上げに加え、供給網問題で木材や銅や大豆など商品価格が過去最高値を更新するなど、利鞘縮小のWパンチに見舞われる状況。共和党の州知事は少なくとも地元経済を支援すべく、バイデン政権に反旗を翻し始めたと言えそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年5月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。