漂流する政治

外から見ているとどうしちゃったのか、と本当に心配になるのが日本の政治の行方です。政治がうまく機能せず、国民の向かうべきベクトルが定まらず、足並みはちぐはぐ。結局、国民も企業も右往左往で出てきた1-3月のGDPはがっかりの実質マイナス1.3%、年率換算マイナス5.1%で戦後最大の落ち込みとなりました。この落ち込みは私から見れば人災ならぬ「政治災」にも見えます。

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なぜこうなったか、と言えば菅総理のリーダーシップ不足は大きいと思います。そしてその後ろで操ろうとした二階幹事長がそれに拍車をかけたとみています。

産経に「内閣支持率急落で衆院解散の決断困難に、カギ握るワクチン」という記事があります。興味深いのは記事の内容より掲載されているメディアの世論調査の比較であります。今の内閣を支持するか、については左派である朝日、テレ朝、NHKそれに時事通信が概ね33-35%程度に対して産経、読売、共同通信、そしてなぜかTBSが40%台で完全な二極化が見られます。二分化は想定通りなのですが、想定外だったのが支持しない方で、トップがTBSの57%で2番目になんと産経の52.8%が入るのです。朝日でさえ47%、NHKが最低の43%なのです。

産経の読者層はやや高齢の保守派の方が多いので現政権にそっぽを向いたということだと思います。これは産経の同記事を含め、誰も指摘していないと思いますが、自民党の足元ががくがく状態になっているといってよいと思います。

なぜこんなふうになったか、言うまでもありませんが多分、国民は疲れ果てているのだろうと思っています。限りない制限と明けない夜、挙句の果てにオリンピック問題が政争になるとは誰が思ったでしょうか?本来であればオリンピック開催が経済正常化のきっかけになるはずだったのです。ところが安倍政権時代から打ち出す対策が裏目裏目で見事な逆回転となりました。

ところで不信感は国政だけではありません。都道府県ごとのコロナ対策やその方針に支持層があると思えばビジネスがガタガタになりやりきれない層の不満も爆発しています。上場会社の飲食チェーン、グローバルダイニング社が経営する23店舗が東京都から休業命令を受けたことを受け、長谷川耕造社長が「今回の命令は違憲・違法で無効な命令であるとの前提から、営業の継続を判断いたしました」と休業命令を無視すると公表しました。

これは正直、尋常ではありません。裁判で争うから自分たちの好きにするというのでは法治国家としてまったく成り立たなくなってしまいます。ましてや上場企業としてのコンプライアンスはどうなっているのでしょうか?酒を飲みたい、我慢したくないという気持ちは皆同じです。皆、こらえているのです。私が知事ならグローバルダイニング社の営業許可取り消しを即日実施します。東証も調査すべきです。

政治漂流についてはいろいろあります。広島県連からの1億5千万円の河井被告への投資金の提供についての厳しい追及に対して二階幹事長は「私は関係していない」とし、甘利氏の名前が取りざたされたものの当の甘利氏は「1ミリも、正確にいえば1ミクロンも関わっていない」ときっぱり否定しています。テレビのインタビューの顔つきからは二階氏はどう見てもクロにしか見えません。そしてそれを突き上げているのが岸田前政調会長で自民党内部の軋みともとってよいでしょう。

更に大規模摂取センターでの接種予約システムについて朝日、毎日、日経がシステムの不備を実際に予約行為を介して実証、それを記事にしました。これに政府が抗議、更に枝野立民代表が「(知らせてくれて)ありがとうというのが筋」と既に野党トップの言動とは思えない二流週刊誌並みの駆け引きになっています。

感染者拡大が制御され、ワクチン接種のプロセスが軌道に乗り、接種率が上がり、非常事態宣言などから解除され一定制限があってもどの業種も一定のビジネスの回復軌道に乗る、というごく当たり前の流れが戻ってくるのが先か、自民に壊滅的ダメージが先に来るのか、この先1-2カ月で見えてくるかと思います。

その間、世界では様々な問題が起こり、国内も含め、積み残した課題は山積しています。日本を漂流させるわけにはいきません。その為にも見える形で中期プランを提示し、強い指導力を見せることがポストコロナへのバトンとなりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年5月19日の記事より転載させていただきました。