朝日・毎日・日経のワクチン不正予約に公益性はあるか

岸信夫防衛相は5月18日午前の記者会見で、自衛隊による東京都と大阪府での新型コロナウイルスワクチンの大規模接種を巡り、朝日新聞出版と毎日新聞の記者が架空の接種券番号などを使って虚偽の予約をしたとして、両社に抗議する意向を示した。

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それに対し、毎日新聞社は同日、取材の過程で架空情報を使って予約したことについて、時事通信社の取材に「確認作業は公益性が高いと判断した」とコメントしたという。この場合、毎日新聞社の言う「公益性」とは、どのようなことであろうか。

それは、予約システムの不備を追及・指摘することによって、システムをしっかりしたものにしたい、またはすることができるという意味合いであろう。予約システム不備が事実であれば放置することでワクチン接種に影響が出る恐れもあり、公益性の高さから報道する必要があると判断したということだろう。

しかし、マスメディアというものは、公益性とともに、その行為が常に公害性にも繋がっていくことを意識するべきではないか。

例えば、ある汚職政治家がいるとする。その汚職政治家の実態を暴くことは確かに公益性があるだろう。しかし、取材や追及の度合いが過ぎて、その政治家の家族を巻き込んでしまった場合はどうだろう。最悪の場合、家族を死にまで追いやってしまうかもしれない。過剰取材・過剰報道というやつである(犯罪加害者家族にもこうした問題が起こりやすい)。こうなると、例えば、その新聞社や雑誌社の行為は複数の人を害する「公害性」を持つことになる。

では、今回の朝日・毎日記者のワクチン不正予約による「公害性」とは何だろうか?毎日新聞社は「予約はすぐに取り消した」と説明しているが、ただでさえ、予約が取りにくい現状なのだ。その記者の行為によって、本当に予約したい老人が予約できなかった可能性はゼロだろうか。

何より、憂慮するのは「愉快犯」「模倣犯」が現れるのではとの危惧である。「朝日や毎日の記者もやったんだ!自分たちがして何が悪い」と面白半分で、ワクチン不正予約をする者が現れることも十分考えられる。

そうなると、朝日・毎日の記者の行為は「公害性」をもつものに転化してしまうのではないか。「確認作業は公益性高い」と開き直るのではなく、マスメディアは自らが持つパワーを恐れるとともに、時と場合により、公害性を持つものとの認識が必要ではなかろうか。

ちなみに、架空の接種券番号での予約は、日経BP(日経クロステック)の記者も行っていた。防衛省は、朝日と毎日に抗議文を送ったようだが、日経にも送るべきだろう(現時点では抗議はないとのこと)。そうでないと、一方的な朝日・毎日叩きと思われかねないし、何より不公平だからだ。