菅首相が昨年11月の所信表明演説で2050年にCO2をゼロにする、脱炭素をする、と宣言して以来、日本中「脱炭素祭り」になってしまった。
日本の同調圧力というのはかくも強いものなのかと、ほとほと嫌になる。政府が首相に従うのは制度上仕方ないにしても、政治家も、メディアも、経済団体も、企業も、みな「脱炭素やりまーす!」と言っている。
ただしこれは表向き言っているだけだ。少し技術や経営のことを知っていれば、あと30年で脱炭素など出来っこないことはみなよく分かっている。筆者は様々な業界の人と議論する。たいてい内輪では顔を見合わせて出来る訳無いよと嗤っているが、外に出ると真剣な顔をして「脱炭素します」と言っている。(ただし筆者は彼らを責めるつもりは毛頭ない。みな生活がかかっているから仕方ない)。
帝国データバンクが昨年末から今年初めにかけて実施したアンケートがその実態を浮き彫りにしている。下図は全国の1万社以上を対象にした調査結果だ。企業の大半がカーボンニュートラルの「達成は困難」ないしは「達成できない」としている。
このアンケートは地域別にも実施されていて、北海道だとさらに「達成できない」「達成は困難」が多くなっている。
推測するに「達成可能」というのはオフィスの電気をゼロエミッション電源にすれば済むような企業だけであり、工場やトラックを抱えているような企業は達成できないのであろう。
このアンケートが発表されてから半年近くになるが、このようなナマの声は「脱炭素」プロパガンダにかき消されてしまったようだ。
さて政治家が聴くべきは、人々の本音と建て前のどちらだろうか?
■